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書評「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集 」 [書評・映画評]
決して誤植ではありません。
福井県の図書館で、うろ覚えの問い合わせで、覚え間違いや、ひどすぎる間違いで悩む司書達が、それらの情報を共有したいと始めたネット情報が本になったというもの。
この図書館だけでなく、同様のおかしな問い合わせに、ときには笑ってしまったり、この書籍の表題のように、どっちが正しかったのか悩んでしまったりとか、そんな例を集めた本。
週に一度は本屋に行くという人にとっては面白い本だが、本屋に縁が無いという人には、さっぱり面白さがわからないだろうという。
本好きなら、この情報だけで正しい書籍を言い当てられるケースも多いが、司書でさえ無理だろうなと思えるのもいっぱい。
たとえば、「うさぎのできそこないが2匹出て来る絵本」
答を知れば、超有名な絵本なんだが、そこまで言うかね。
「ハリーポッターが書いたうさぎの本」
これもけっこうよく知られている間違いなので、ピンと来る人はすぐにわかるが。
まあ、司書の皆さん、お疲れ生です。
書評「小右記」 [書評・映画評]

小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2023/07/21
- メディア: Kindle版
ロバート秋山の怪演で、一躍有名になった藤原実資が63年間書き続けた日記。個人的憤慨も書き連ねながら、宮中の行事次第を丁寧に書き残した、歴史書としては最高級と言える一級資料。リアルタイムで書いているから信頼性抜群。当人が見聞きしたことしか書けないから嘘偽りがない。歴史的に有名になったのは、藤原道長の「望月の歌」が記録されているのはこのこの書物だけということから来ている。
まあ、膨大な資料をすべて読み尽くすのはとてもじゃないが無理なので、ビギナーズ版として、良いところ取りした本を読んでみた。抜粋だけにけっこう面白い。「光る君へ」を見ながら、これは史実なんだと確認できたり。
曲がったことや筋が通らないことが大嫌いで、権力者にも忖度しない。だからこそ当時の為政者の信頼が厚く、トップが変わっても頼りにされ続けた一生だった。
この本の良いところは、原文もあり、読み下し文もあり、現代語に直した文もあり、そして背景等の解説も付いているので、好きなところを読んでいける。歴史マニアにとっては必読書かも知れない。
で、読み終わったと同時に、大河ドラマ「光る君へ」も終わってしまった。
映画「はたらく細胞」 [書評・映画評]

ヘモグロビンの数値が極端に低くなって緊急入院したのが3年前。
余談だが、東京オリンピックがあると必ず入院したことになる。
約2月半入院して、現在も通院しているが、赤血球の数値は基準より低いまま。
そんなことで、原作も知らないし、アニメも見たこともないのに、赤血球と白血球のお勉強をしにいった。
何これ?「はたらく」細胞じゃなくて、「戦う」細胞でしょう?
余談ながら、主役の永野芽衣を最初に見たのが、子役で登場した「ゼブラーマン2」。
そのときの前半の悪役を世間の意表を突いた配役で演じたのが仲里依紗。その時以来、こういう役が増えているが、今回も主要キャラで登場している。
永野芽衣を次に見たのがやはり子役で出ていた「るろうに剣心1」。主役が佐藤健。
もちろん今回もW主役。剣心ばりのアクションシーン満載。同じスタッフが作ったらしい。本屋に並んでいる原作漫画の表紙とそっくりの白血球。彼がモデルになったとしか思えない。
ドジでのろまな赤血球が白血球に助けられながら成長していく話。しかし最後には・・・・
今回の映画版では原作にはない、人間本人も登場とかで、元親子が再演。不摂生で体内の細胞を困らせる父親と、骨髄性白血病になって死生をさまよう娘の役。体内細胞絶滅の危機。彼氏役が成長した加藤清史郎。このカップルも、別のドラマで見たような気が。
物語の内容としては、救いのない物語。いや、体内の細胞の話だが。いいのか、これで。たぶん映画用の物語なんだろうが。
出演者は実に楽しそうに役を演じている。それだけが救いかな。
書評「六人の嘘つきな大学生」 [書評・映画評]
急成長の新興IT企業の入社試験。若干名募集に対し5千名を越える応募者の中から、最終6名が最終試験に臨んだ。最終審査はグループディスカッション。内容によっては6名全員合格もあると聞いて、6名はお互いを知り合い、最終に臨む準備をしていたのだが、直前に採用枠の変更が告げられ、内定はたった1名、その1名をグループディスカッションで選んで欲しい、という内容に変更。同紙と思っていた6名が瞬時に敵に変わってしまった。そして事件が起きた。円滑に話し合いが行われるはずの場に爆弾が投げ込まれた。6名が入社にふさわしくないと告発する6通の封筒。宛名が書かれた封筒にはそれぞれ別人の恥部が入っているらしい。開けて読むべきかどうかから始まる葛藤は、誰がこんなことを仕組んだのだという「犯人捜し」に。
すぐに知らされる結論から言えば、内定1名は事実であり、議論の最後に「犯人」が特定され。そして8年後、「犯人」とされた人物が病死したという知らせが、内定から正式採用となった人物に届けられ、自分は真犯人ではなく犯人を知っている、と書かれた資料を手にする。最小された人物は8年前の記憶をたどり、病死した1名以外の関係者全員とコンタクトを取って真相を見つけ出そうと調査を開始した。
とんでもない、2重にも3重にも仕組まれたミステリーである。
なにしろ、いきなり叙述ミステリーで、途中で読み直しに迫られた。しかも伏線が多岐にわたっていて、これが伏線だったの?と驚く場面ばかり。余りの多さに作者も本筋が見失われるだろうと最小限にしたそうだが、その結果、説明不足だらけになり、読者が推理するための最低限の情報さえ削ってしまったので、解決編で驚かされてばかりになった。
はっきり言って映像化すれば魅力が半減以上になると思われるのに、よく映画化した物だ。がっかりしたくないので見に行く気は無いが。
どんでん返しの繰り返し。
嘘をついていると指摘されて、当人は最初反論もしながら、8年後にはすべて真実だと居直ったかと思えば、実は他の情報から、それが誤った情報から来る物だと判明し、何が何だかわからなくなる。現代社会ならではの物語かも知れない。
書評「赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う」 [書評・映画評]
名探偵赤ずきんシリーズ第3段。今回はアラビアンナイトの世界で殺人事件の謎を解く+α
今回は趣を変え、アラビアンナイト=千夜一夜物語を踏襲しています。
最初の妻の裏切りから女性不信に陥った王が、夜ごと女性を殺害していくという残虐な行為を止めるために、シェヘラザートという女性が、夜ごと珍しい話を王に聞かせて、無事に王を改心させるという逸話をそのまま利用。シェヘラザードが語る物語が、なぜか赤ずきんの冒険譚だった、ということで、3つの殺人事件が用意されている。そして佳境に入ったところで、そして赤ずきんが絶体絶命に陥った場面で朝を迎えて、続きは今夜。というじらし作戦。まんまと作戦にはまった王は続きを聞きたくて夢中になるが、3つ目の事件では赤ずきんとまったく同じ推理をした王が、ある一件で激怒。もう話を聞く必要もないと、シェラザードに襲いかかろうとするが、実はその事件は赤ずきんの失敗譚だった。推理が見事はずれていた回だったという。
そして、重大な秘密がここで明らかにされる。最後まで気を許せない仕組みとなっている。
まあ、魔法の世界での殺人事件だから、本来は何でもありではあるのだが、前の2つの事件はあらかじめ、その状況ではどんな魔法がなされているのか、事前に魔法の特徴が述べられているので、推理に問題はなかったのだが、3つ目の事件は、ちょっとアンフェアに、肝心の魔法の内容が推理する段階では示されていないという欠陥がある。これでは赤ずきんが推理をはずしても仕方がない。ある状況で、安楽椅子探偵にならざるを得ず、聞いた情報のみの推理では無理があり、自由に動けるようになって、初めて真実に出会うチャンスが訪れたのだから、やむを得ないことではあるのだが。
ということで、今回の作品は切り売りが出来ない。初めから最後まで通さないと意味が無いので、単発での映像化は不可能。連続ドラマならできるかもしれないが。
映画「八犬伝」 [書評・映画評]

「南総里見八犬伝」は曲亭馬琴が水滸伝にインスパイアーされて、28年かけて書き上げた日本初の伝奇小説の最高峰である。何度もドラマ化されているが、2時間程度の尺では収まりきれない内容だが、この映画は作者の馬琴と友人の葛飾北斎、そして支えてきた家族の物語の挿入としてダイジェストで紹介する程度。そういうやり方もあったのだな。
そういう原作を元にしているらしい。
なにせ最初にTVで見た映画版が、原作をめちゃくちゃ改編したとんでも版だったので、その後学校の図書室で少年向けの本を読んだが、子ども向けにけっく簡略した小説だったけれど、TVの連続ドラマで本物を知ってやっとすっっきり。そしてあの名作、坂本九ちゃんナレーションのNHK人形劇がさいこーでしたね。碧色ぴんくのコミックも全巻読んで納得できた。
一般的には「滝沢馬琴」で通じているが、当人は一度もその名前を使ったことはないらしい。明治期に誰かが勝手に呼び出したとか。いろいろな筆名を持っていて、使い分けするこだわりが当人にはあったそうで、戯作を書くときは曲亭馬琴で通したとか。
同時代の葛飾北斎とは腐れ縁というか、喧嘩別れしたという話もあるが、その事実はなかったらしい。
物語は、1回分の内容を馬琴が北斎に語り、そのイメージで北斎が下絵を描き、その下絵を参考に馬琴が物語を仕上げたという設定にしている。
晩年両目が見えなくなり、完成を断念しようと思ったが、息子の嫁が聞き語りを文字にしたいと申し出があり、漢字も書けなかったのに苦労を続けて最後には馬琴の筆と変わらない筆使いまでなったという。文句ばかり付ける馬琴の妻役が寺島しのぶで、息子の嫁役が黒木華で、このコンビ、他の映画でもあったような、あまりにぴったりしすぎる。
馬琴達の物語がけっこう面白かったので、本編の八犬伝がダイジェストでもそんなに気にはならなかった。まあ、本編をよく知っているからなのだが、ところどころ、おやおやと思うところもなきにしもあらず。たとえば、原作では生まれる前から物語が語られる犬江新兵衛が、いきなり若者で登場したりとか、唯一のヒロインである浜地が、申し訳ないがイメージと違っている印象。まあ現在最注目されている若手女優の起用に文句は付けられないが。反対に女装美人で実は男だったという犬坂毛野はぴったりの配役だと納得。その逆に主人公は人気俳優なんだろうが人気だけで選ばれたのかなと思ってしまう。まあ登場人物すべてを納得できる配役にするのは難しいよね。
いろいろ思いながらも、本編全体はかなり満足できる仕上がりだったとは言える。
ネトフリ「極悪女王」 [書評・映画評]
Netflixで話題の「極悪女王」全5話を一気見した。
クラッシュギャルズ前世の頃、ちょうどプロレスにはまっていて、
週刊ゴングを中心に、プロレス紙誌を読みふけっていた。
ゴールデンタイムのプロレス中継はよく見ていたし、女子プロも
放送があるときは見ていたので、けっこう詳しい。
ついでに、ダンプ松本と長与千種が、下積み時代は励まし合って
将来を語り合った友人関係にあったことなども聞いていた。
そんなこんなで、流血シーンは苦手ながら、とにかく引き込まれた。
特にラストで、ダンプ松本と長与千種がタッグを組む場面などは
感動的でもある。史実ではダンプの最後の引退試合が終わった後に、
会場のクラッシュファンに対して涙ながらに謝罪をしたらしい。
で、主役を演じたゆりあんレトリバーがダンプ松本にしか見えなかった。
家庭環境とかは今回初めて知ったけれど、思わず脚本で一杯盛ったのかと
思ったが、事実はそれ以上だったらしい。心優しい少女がいかにして
極悪女王になりきったのか。脚本が素晴らしいの一言に尽きる。
いろいろ諸事情で崖っぷち女優の二人が、それこそ文字通り体当たりで
クラッシュギャルを演じているのはお見事というしかない。
クラッシュギャルズ前世の頃、ちょうどプロレスにはまっていて、
週刊ゴングを中心に、プロレス紙誌を読みふけっていた。
ゴールデンタイムのプロレス中継はよく見ていたし、女子プロも
放送があるときは見ていたので、けっこう詳しい。
ついでに、ダンプ松本と長与千種が、下積み時代は励まし合って
将来を語り合った友人関係にあったことなども聞いていた。
そんなこんなで、流血シーンは苦手ながら、とにかく引き込まれた。
特にラストで、ダンプ松本と長与千種がタッグを組む場面などは
感動的でもある。史実ではダンプの最後の引退試合が終わった後に、
会場のクラッシュファンに対して涙ながらに謝罪をしたらしい。
で、主役を演じたゆりあんレトリバーがダンプ松本にしか見えなかった。
家庭環境とかは今回初めて知ったけれど、思わず脚本で一杯盛ったのかと
思ったが、事実はそれ以上だったらしい。心優しい少女がいかにして
極悪女王になりきったのか。脚本が素晴らしいの一言に尽きる。
いろいろ諸事情で崖っぷち女優の二人が、それこそ文字通り体当たりで
クラッシュギャルを演じているのはお見事というしかない。
書評「告白撃 」 [書評・映画評]
12年前、大学1年の授業でたまたま同じグループになった、男女3人ずつ6名は、その後も交流を続け、メンバーの一人の家に入り浸り。楽しく過ごす大学生活4年間だった。
趣味も進路も異なる6人は、卒業後、連絡を取り続けてはいたが、特定のメンバー以外、特に会うことも無く暮らしてきたが、卒業7年後、ある目的を持ったメンバーの意図で一泊の旅行に6人全員が久方の集合。他の客がいない宿で、別の意図を持ったメンバーの計画が交錯していく。
と書くとまるでミステリー小説。あいにく誰も死ぬことは無く、物語の最後には、これまでとまったく変わらない関係が続いていくという。あくまでラブストーリー。ただし、ちょっとひねくれた展開の物語。
住野よる、の小説は全作読んでいる。当たりもあればいまいちもあるけれど、何となく前作から作風が変わったような。前作が一番のお気に入りだったが、作者紹介によれば、前作は賞を取ったようだ。やっぱり。今作もひねりはあるけれど、素直に読めて、ストレスも溜まらない。ただ最後にやはりミステリー的に壮大な仕掛けが待っていて驚かせる。後味は良い。
物語は2人の人物の視点で交互に描かれているが、最後の最後で、本当の主役にバトンタッチする。いわゆる種明かし。だから表紙に描かれている男女2人の後ろ姿が、途中までストーリーテラーをしている二人かな?それにしては男のイメージが少し違う、と思っていたら、最後にひっくり返された。うまい表紙絵だ。
ストーリーテラーの男は既婚者という設定なのに、奥さんはちょっとしか登場しない。まあヒロインにとって安全パイという位置づけにしたのかも。それと物語途中でのダミーにするためか。それと3歳年上の同級生の事情は述べているのに、メンバー一人の高校の女性の先輩が、どうして同級生なのか、そのことには一切触れていない。かなりの切れ者だから、1年間留学でもしていたのだろうか。まあ、6人全員個性が強すぎて、それぞれが際立ちすぎだが。
最近小説は2回読むことにしているのだが、前作と今作は何度でも読み返すことになるかもしれない。
書評「薬屋のひとりごと 15」 [書評・映画評]
TVアニメ化もされて評判の、「薬屋のひとりごと」本日発売第15巻。
今回は、虫垂炎の手術のお話、だけ
いやほんとに、虫垂炎の手術のお話だけで丸々1巻使っている。
と言っても、架空の場所・時代の話ながら、日本で言えば江戸時代中期の頃。
華岡青洲が全身麻酔を開発したのが250年も昔の話。同じく「解体新書」が
出されたのも江戸末期の頃。それを思えば、虫垂炎の手術って、とんでもない
話には違いない。
おまけに、手術失敗となれば、一族全員処刑されるという話。
なので、プロジェクトチームが結成されても、手術経験豊富な筆頭医官2名と
その身内がチームに加えられている。本編主人公猫猫も羅門の身内と言うことで
処刑されても最小限にすむように選ばれる。まあ、その時には、変人が黙っては
いないだろうという読みもあるのだが。
ということで、緊張しかない場面なので、1巻丸々使うのも無理はない。
おかげで今回は、姚も燕燕も羅半兄も出てこないので若干物足りない。
ついでに言えば、変人軍師も算盤人間も登場しなかった。まあいいが。
しかし、虫垂炎と盲腸炎って違うんですね。知らなかった。
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