ハリーポッター死神の秘宝・第4章「七人のポッター」 [書評・映画評]
第4章「The Seven Potters」
ハリーは17歳になる前に家を脱出します。13人が手助けに来ます。2人一組の7チームがばらばらに移動しますが、この日に移動することはすでにヴォルデモートに知られています。
家を出たとたんに襲われる彼ら。
ハリーは急いで二階に上がり、消えゆく自動車を目で追いかけます。とうとう家にはハリー一人が残されます。不思議な感覚がハリーを襲います。これまではただ夏の間を過ごすためだけの家だったのに、なぜか急にいろいろな思い出がよみがえってきます。ダーズリー一家がハリーを残して出かけたときには、急いでTVを見まくったり、ダッドリーのパソコンをいじったり。昨年はダンブルドアがやってきたことや、昔は狭い部屋に押し込められていたこともなぜか妙になつかしい思い出になっています。さらには覚えているはずもないこの家に初めて連れられてきた日のことなども。
そんな思い出にふけりながら、出て行く荷物を持って階下に降ります。まもなく迎えがやってきました。サイドカー付きのバイクでハグリッドが、そして羽の生えた黒馬セストラル2頭と後は空飛ぶ箒で13人の仲間がやってきました。最初にハリーにとびついたのはハーマイオニー、続いてロン。その他には双子のフレッドとジョージ、婚約中のビルとフラー、そして新婚のルーピンとトンクス、アーサー・ウィーズリーにキングスレー・シャックルボルト、リーダーで一番頼りがいがあるマッドアイ・ムーディーと、なぜかマンダンガス・フレッチャー。この男、昨年はシリウスの家から宝物をいくつか盗み出しては勝手に売って金儲けをしていて、ハリーと一悶着あったのは記憶に新しい。なんでこの男までいるのか不思議だが、実に態度がそわそわしています。だからマッドアイはたえず監視の目を離しません。
トンクスはハリーに左手薬指の指輪を見せます。結婚したことを知って喜ぶハリーに、内輪で式をやったので呼べなかったことを詫びるトンクスですがハリーは気にしません。(この二人とハリーとの縁は最後まで関わってくるのですが、それはおいおい書いていきましょう)
こんなに大勢が集まることを驚くハリーに、マッドアイは計画の変更を告げます。
マッドアイはこの時気づいていませんが、実は第1章でスネイプは信頼できる情報筋からこの日にハリーが出て行くことをヴォルデモートに伝えているので、実は重大な過ちを犯すことになってしまうのですが、スネイプが伝えなかった(知っていてわざと言わなかったのか)大切な方法がハリーに告げられます。それがこの章のタイトルの「7人のポッター」です。
ハリーに魔法はかけられませんが、それ以外の人物はすべて17歳以上なので、ハリーの偽物を6人作り、2人一組で7カ所の安全な場所にまず別々に移動、その後ポートキーを使って「隠れ穴」に集合するという方法です。ハリーはこの計画に猛反対します。危険な目に遭うのは自分一人で十分で、他の6人まで同じ目に遭わせたくありません。でも彼らは自分たちも命をかけて戦っているんだと言ってハリーの承諾を得ます(一人だけ尻込みしている人物がいます、マンダンガスです)。ポリジュースで変身して、用意したハリーの衣装にメガネもかけて、ごていねいに梟のかごも用意しています。自分たちの元の服はリュックサックに詰めます。ハリーの髪の毛を混ぜたポリジュースはおいしいようです。少なくとも2巻でハリー達が飲んだクラビーやゴイルの味とは全然違うようです。
それぞれの最初の行き先は騎士団の家やトンクスの両親の家、モリー・ウィーズリーの大伯母さんのアーンティー・ムリエルの家など。ハリーはトンクスの両親の家に向かいます。
組み合わせは、監視の必要なマンダンガスにはマッドアイが見張りながら箒で移動。マンダンガスはまったく落ち着きがない。フレッドとアーサー……指さされた偽ハリーは自分はジョージだよと言う……とにかくもう一人とルーピン。この4人も箒で移動。箒に自信のないフラーはビルとコンビでセストラルに乗ることに。同じく箒が比較的苦手なハーマイオニーもキングスレーと一緒にセストラルで。残りのロンとトンクスは箒で移動。最後にハリーとハグリッドがサイドカー付きバイク。何しろハグリッドの体型では箒も馬も持たないのだから。
ハリーは箒のファイヤーボルトと梟のヘドウィッグが入ったかごを持ってサイドカーに乗り込みます。見張りがいなくなった段階で7組14人は「隠れ穴」での再会を約して一斉に飛び上がります。
はるか上空に昇ったところで異変に気づきます。彼らはおよそ30人の、フードをつけたデスイーター達にいきなり取り囲まれてしまったのです。
事態に対応できずにただ逃げるしかない彼らに情け容赦なく呪文の光線が飛び交います。ハグリッドのバイクにも当たったようで、バランスを崩してハリーの足下からかごに箒にリュックが落ちます。リュックはひもが肩にかかっていて大丈夫でしたが、箒ははるか地上に落ちていきました。そして……
逃げても逃げてもデスイーター達はしつこく追いかけてきます。あと少しで目的地というところまで来て追いつかれてまた光線が乱れ飛びます。デスイータの一人のフードが取れて、中にはあのナイトバスの運転手で、デスイーター容疑でアズガバンに送られてしまったスタンレイ・シャンパイクの姿がありました。彼は無実だったのにアズガバン生活が本当に彼をデスイーターの仲間にしてしまったようです。彼が突然叫びました。
地上にハグリッドが倒れているのが見えました。彼にぶつからないようにコースをそらしてブレーキをかけていきましたが、バイクは地面に衝突してハリーは泥池に投げ出されました。
当初はこの家から煙突移動システムで出る予定でしたが、それを詳しく知っているピアス・シックネスという人物が行方不明になったとか。どうやらデスイーター達に捕らえられたのかもしれず、計画がばれている恐れがあってこの方法では監視されていれば危険であり、さりとてハリー自体に移動魔法をかけると、未成年魔法使用禁止規定に引っかかって魔法省で詳しく監視され、魔法省に潜り込んでいるデスイーターにどこに行ったのかばれることがあきらか。
と言うことで、魔法省にはハリーが17歳になるまでは家から出ないというように偽の情報を流しているので、毎日の見張りとして家の回りにいる2人のデスイーターの目さえくらませれば脱出は比較的簡単だ、ということになります。
ハリーになったロンは、このひざにジニーが横たわったんだな、などと言ったり、ハリーの体に入れ墨などないのがわかり、前巻でジニーが「ハリーの体にはドラゴンの入れ墨がある」と友人に語っていたのが冗談だったというのを知ります。フレッドとジョージはまるで双子みたいだと言ったり、あるいは変身しても自分の方が男前だと言ったり、相変わらずふざけています。
このバイクはシリウスのバイクをアーサーが改造した物で、ハンドル部分に秘密のボタンがついています。緊急時以外には使わないようにアーサーに言われますが、まさかいきなり使うことになるとは誰も思いません。
かごをうまく引っかけたのですが、ヘドウィッグが動きません。ハリーが必死に叫んでもヘドウィッグが起き上がることは二度とありませんでした。悲しみにくれるハリーは魔法の乱れ打ちを行って何人かのデスイーターを倒し、逃げ道を作ります。バイクの秘密のボタンを押すと、花火のような炎が吹き出してバイクは急加速をしました。おそらく何も知らない地上の人間が見れば花火大会をやっているのかと思ったかも。
「いたぞ!彼だ。本物がここにいたぞ!」
バイクが速度を上げました。なぜかデスイーター達は視界から消えていました。
今のうちだ、とバイクは走ります。でもハリーはデスイーターの言葉が気になってしかたがありません。
やっと目的地の上まで来ました。高度を下げて降りていこうとするときに再びデスイーターが現れました。今度はハリーの額の傷が痛み出しました。ということは……
ハリーの痛みが消えないときに殺人光線が彼に向けられました。危うし。その瞬間ハグリッドが相手に飛びかかりました。箒は体重を支えきれずに組み合った二人は地上に落ちていきました。ハリーは必死でブレーキをかけようとします。その前に煙のようにヴォルデモートが姿を現しました。ハリーはバイクをあやつるのが精一杯。ヴォルデモートの杖から光りが放たれるとき、ハリーの杖が突然強烈な光りを放ってヴォルデモートの杖を飛ばしてしまいました。あわてるヴォルデモートは他のデスイーターから杖を借りようとします。ハリーは必死で地上に向かいます。ヴォルデモートがまた死の呪文を唱えようとしたとき、彼の姿が突然消えてしまいました。