SSブログ

ハリーポッター死神の秘宝・第16章「ゴドリックス・ハローにて」 [書評・映画評]

第16章「Godric's Hollow」

「ゴドリックス・ハロー」というのは「ゴドリックの谷」という意味ですが、たとえば鹿児島を「カゴ・アイランド」などと訳すと変なように、続けて地名だと思うのでそのままカタカナ表記で地名扱いにしました。

二人きりになったハリーとハーマイオニーは、ハリーの生まれ故郷に行きます。ハーマイオニーにとっても気になることがあったのです。それはダンブルドアの遺品の本にあった模様です。そしてハリーの両親が眠る墓地に同じ模様を見つけるのでした。

昨日の出来事が夢であればいいのにと思ったけれど、朝になってロンはやはりいませんでした。彼は行ってしまいました。そしてもう戻れません。現実に、テントには結界が張ってあるので、次に移動すればもうロンが彼らを見つけ出すことは不可能です。ハーマイオニーは一晩中泣き明かした目で朝食を取りました。何度も川岸に出てはロンが戻ってこないかと思いましたが無駄です。何度もテントをバッグにしまったり出したりした後、決心して彼らは移動しました。

岩場に腰を下ろしました。そこにテントを張りました。それから何日もロンのことは話題にはしません。ハリーはロンがホグワーツに戻っていないかと、魔法地図を調べましたがロンの軌跡はありません。替わってジニーの足跡が見えます。元気でやっているようです。
本物のグリフィンドールの剣がどこにあるか二人は考えました。ダンブルドアが剣を隠しそうな場所は見当が付きません。だんだん怒りを感じる対象がロンなのかダンブルドアなのかわからなくなりました。希望も失いつつあり。あてもなくさまよい、何のアイデアも浮かません。このままだとハーマイオニーも離れていくかもしれません。

ハーマイオニーはときどきフィネアス・ニゲルスの肖像画を取り出して呼び出そうとしましたが彼はなかなか出てくれません。彼はスリザリン初の校長であるからスネイプの側にいます。だからスネイプを批判するようなことにはいい顔をしません。しかしほんのときたま顔を出してわずかにホグワーツの様子を聞き出すことはできました。いろいろ罰則規定を出しているようで、ジニーもホグスミードに行くことは禁止されたようです。スネイプはまたアンブリッジが以前に出していた規則、非合法集会の禁止や3人以上の生徒が勝手に集まらないこと、などの規則を出しているようです。裏を返せば、ジニー、ネビル、ルナ達がダンブルドア軍団を続けていると言うことなのでしょう。ハリーはジニーにむしょうに会いたくなりました。同時にロンやダンブルドア、そしてホグワーツ自体にも行きたくなりました。ハリーはスネイプの管理の下でもいいから学校に戻ってやわらかいベッドに眠り、友人達と過ごしたいなどとばかげたことも思ったりしました。もちろん彼は最重要要注意人物で1万ガリオンの賞金首です。魔法省と同じくホグワーツはもっとも危険な場所です。フィネアス・ニゲルスは二人がいる場所を聞き出そうとしますがハーマイオニーはすばやくバッグの中にしまいます。するとしばらくは彼の方から出てくるのを拒否しだします。

寒くなり出しました。同じ場所に長くはいられません。凍った大地が多いイングランドの南部にいるよりもスコットランド中部の方がテントが広げやすいですが、夜にはテントの半分が雪に埋もれます。旅行中家々の窓にクリスマスツリーが見受けられました。
彼はホークラクスをはずして見張りながら、もう一度ハーマイオニーに提案しようと思いました。
「ハーマイオニー」
「何?」
彼女は「吟遊詩人ビードルの童話集」に夢中で空返事です。
「ハーマイオニー、ちょっと考えていることがあるんだが」
「ハリー、ちょっと教えてくれない」
話を聞いていません。彼女は童話集を持ってきました。
「この印を見て欲しいんだけれど」
ある物語のタイトルの上にある印を見せます。ルーン語で書かれているのでハリーには読めませんが、三角形の目のような形で瞳を垂直な線が横切っています。
「古代ルーン語はわからないよ」
「わかってる。でもこれはルーン語じゃなくて目のように見えるし、インクで書いたみたい。本に元からあるんじゃなくて誰かが書き込んだみたい。見たことある?」
「ちょっと待って……そうだ、ルナのお父さんが着けていた飾りの模様じゃない?」
「そうね、そうだわ!」
「じゃあ、グリンデルバルトのマークだ!」
ハリーはクラムが話していたことをハーマイオニーに告げました。
「グリンデルバルトがマークをつけていたなんてどこの資料にもなかったわよ」
「いや、確かにクラムは見たと言ってる」
「でも闇魔法のマークを童話に書き込むなんて変じゃない」
「そういえば、魔法省でチェックされたとき、スクリムジャーは闇魔法のことも知っているから気がついたはずだろうし」
ハーマイオニーが考え込んだ間にハリーは提案しました。
「ずっと考えていたんだが、ゴドリック・ハローに行かない?」
「ええ、そうね。わたしもそう思っていたところなの」

以前に猛反対された提案をあっさり受け入れられてかえって驚きました。いろいろ理由があります。ハリーは気がつきませんでしたがゴドリック・ハローはゴドリック・グリフィンドールの生まれ故郷なのです。バチルダ・バグショットの「魔法史」にしっかり町の記述があります。残念ながら19世紀までの話しかないのでハリー達のことは書かれていません。そしてムリエルから聞いた話でハリーはバチルダ自身もそこに住んでいることを告げます。
最初ロンの大伯母さんとは言えないのでジニーの大伯母さんと表現します。結婚式でハーマオニーのことを「やせ細った腕」と言った女の人と言えばわかってくれました。
ひょっとしたらダンブルドアはバチルダに剣を預けているかもしれない。彼女自身はぼけているようだから可能性は低いが、ハリーが生まれ故郷を訪れることはダンブルドアにも予想できるので、グリフィンドールの剣をそこに隠した可能性は十分考えられました。

ハリーは興奮気味です。やっと帰れるのです。ヴォルデモートのことがなかったら、彼もその町で大きくなり学校の休暇に戻り友人を家に招き、ひょっとしたら弟や妹が生まれていたかもしれません。そして17歳の誕生日には母親がバースデーケーキを作ってくれていたでしょう。そんな未来が一瞬にして奪い去られたのでした。リュックから両親の写真を取り出して眺めます。

ハリーは翌日にも出発する物と思いましたが、ハーマイオニーは今回は慎重です。マグルの中年夫婦の髪の毛を手に入れ、透明マントの中でも移動呪文が使えるように何度も練習して、出発の準備に1週間近くかかりました。すべての荷物をバッグにつめて出かけます。しかし計画外のことが起こりました。ハーマイオニーの移動呪文で着いた町は雪景色です。透明マントに隠れていても足跡が残ります。思い切って透明マントを脱ぎました。家々にはクリスマスのデコレーションがほどこしてあります。この中にハリーの家もあったのでしょう、バチルダの家もどこかにあるはずです。記憶の端にないかと考えましたがこの町を離れたのはあまりにも小さすぎました。 小道の角を曲がると町の中心部の広場に出ました。酒場や教会があり、人でにぎわっています。 今日はクリスマスイブでした。

ハリーは興奮を越えてスリルのようなものさえ感じ出しました。彼が来たいと願っていたところに近づいたのです。ハーマイオニーはそんな彼の心に気づいたようで、初めて彼女から手をつないで引っ張っていきました。

広場の中央に戦争記念碑が建てられていました。広場を横切ろうと通り過ぎると記念碑は突然姿を変えて3人の銅像に変わりました。メガネをかけた青年、髪の長い女性、母親に抱かれた赤ちゃん。ハリーは近づいて両親の姿をしっかり見続けます。額にまだ傷をつけていない自分自身の石になった姿を見るのは奇妙な感じでした。
「さあ、行こう」
向きを変えて教会に向かいました。背中で銅像がまた記念碑に戻りました。
教会から讃美歌が聞こえてきます。ホグワーツでのクリスマスを思い出しました。

教会墓地は雪がつもっています。ポケットの中で杖を握りながらゆっくり捜しました。知っている名前もいくつか見つけました。
「ハリー、ここ見て!」
ハーマイオニーが呼ぶので期待して行きましたが両親の墓ではありません。ダンブルドアの母親と彼の妹の墓でした。彼らの生年月日・死亡年月日が書かれた後、次のような言葉がありました。
『あなたの宝があるところ、あなたの心もある』
長男のダンブルドアが書いたはずですが意味はわかりません。
ダンブルドアと自分のルーツの墓がこの場所にあることを告げていてくれたなら、一緒に墓参りに来ていたかもしれないのに。再び両親の墓を探しに行きました。
「これ見て!あっ、ご免、ポッター家の墓じゃないけれど」
ハーマイオニーがまたハリーを呼びます。
関係ないなら行きたくはなかったのですが、ぜひ来て欲しいというので見に行きました。古びた墓で文字もよく読み取れません。
「ここに本にあったマークがついている!」
確かに三角形のマークがあります。かすかに『イグノータス』という文字が読めました。でもハリーには興味はないので戻ります。
3度目にハーマイオニーが呼びました。今度は本当にハリーの両親の墓でした。
ダンブルドアの母娘の墓の2つ後ろにそれはありました。

ジェームス・ポッター1960年3月27日生まれ、1981年10月31日亡くなる
リリー・ポッター1960年1月30日生まれ、1981年10月31日亡くなる
     倒すべき最後の敵は『死』

と書かれていました。「死」というのはデスイーターのことなのでしょうか。
「そうじゃなくて、死を越えて生きる、ってことじゃない?」
でも両親は死んでいます。涙があふれてきました。雪に埋もれたその下にリリーとジェームスが眠っているのです。せっかくお墓に来たのに何も持ってきませんでした。お墓の回りも草は葉がしおれ凍り付いています。ハーマイオニーが杖を取り出し、クリスマスローズの花を出しました。ハリーはそれを受け取ると両親のお墓に捧げました。
もう戻らないと。彼はハーマイオニーの肩を抱き寄せるとハーマイオニーも腕をハリーの腰に回しました。そしてダンブルドアの母妹の墓を過ぎ、墓地のゲートに向かって歩き出しました。


nice!(0) 
共通テーマ:

nice! 0