ハリーポッター死神の秘宝・第23章「マルフォイ館にて」 [書評・映画評]
第23章「Malfoy Manor」
絶体絶命の危機に陥りました。3人とも捕らえられ、杖も取り上げられ、監禁室に閉じこめられます。そしてハーマイオニーはベラトリックスに厳しく拷問を受けます。悲鳴を聞いて泣き叫ぶロンですがどうすることも出来ません。先に捕らえられていた二人の人物とも遭遇します。ハリーはただ助けを求めて祈ることしかできません。
真っ暗な中、ハーマイオニーの杖がハリーに向けられています。呪文がハリーの顔に当たり、メガネは飛ばされ顔は腫れ上がります。直後に男達が乱入。あっというまにハリー達は取り押さえられ、杖も奪われてしまいます。ロンとハーマイオニーも5人の男と格闘していますが、ハーマイオニーを守ろうとしたロンが蹴られ殴られ取り押さえられます。ハーマイオニーを捕まえた男は聞いたような声で「いい娘だ、どうしてやろう。肌触りがいいな」と言います。ワーウルフのグレイバックです。もう一人はスキャビオルと呼ばれていました。学齢期ならリストがあるので簡単に調べられるので3人は偽名を使い卒業していると告げます。ロンは抵抗した際に口を切って、言葉がうまく発音できません。
そのとき、連中の仲間がテントの中でグリフィンドールの剣を見つけます。ゴブリンが作った名剣と言うことはわかるのでたいそうな金になると喜びます。同時に日刊預言者新聞を発見して、そこにある写真からハーマイオニーの正体がばれます。彼女はハリーと一緒に行動しているらしい、という記事からハリーも怪しまれ、落ちていたメガネも見つけられてかけられ、額の傷も見つかります。もっとも呪文のために顔が変形していて確認はできません。それでもとうとうハリーを捕まえた、おまけに杖も奪い取った、ということでかなりの賞金が手にはいると、彼らはハリー達を魔法省にではなく直接ヴォルデモートに引き渡すことにしました。
ワーウルフはデスイーターの仲間には加えてもらえないので直接ヴォルデモートに連絡を取ることはできません。そこでアジトにしているマルフォイ館に運ぶことにしました。移動呪文で一斉に彼らを運びます。
ハリー達が着いたところは門が閉ざされています。最悪の事態はまだ避けられています。ここにはヴォルデモートはいません。グレイバックは、ハリーポッターを捕まえたと叫びます。門が開いて中に引き立てられます。ハリーはヴォルデモートに伝わったかどうか知ろうとします。
ブランケットを取り去ると、やせた歯のない男がいました。彼はヴォルデモートに語りかけました。とうとうやってきたか。いつか来ると思っていた。しかし残念ながら無駄骨になったな。もう私は持っていない。
グレイバックは出てきたナルシッサにハリーとその仲間を捕まえたと言います。しかし確認ができないので、ちょうどイースター休暇でドラコが戻っているので彼に確認させようと言って奥の部屋に連れて行かれます。奥にはルシアスとドラコがいました。ハリーは久しぶりにドラコを見ましたがドラコはまともに顔を合わせようとはしません。ハリーは暖炉の向こうにある鏡でグリモールド・プレースを出て以来何ヶ月ぶりかに自分の顔を見ました。自分でも誰かわからないくらいでした。ドラコははっきりとはわからないと答えました。グレイバックは自分の手柄を証明したいので必死に確認をせまりますがドラコはあまり気乗りがしない様子です。ハーマイオニーやロンの確認も迫られますが、これはごまかしようがないので認めたような感じです。ルシアスは、確かにハリーであると確認できなければヴォルデモートを呼ぶことはできないと言います。間違えた場合どんな怖ろしい罰を受けるかわかったものではありません。ハリーから奪った杖も確認しますが、これはハリーの杖ではないのでますます疑わしくなります。
後ろのドアが開いてベラトリックスが入ってきました。ハーマオニーを確認するとハリーに間違いないと決めつけてすぐにでもヴォルデモートに連絡をしないと、と言って腕のデスイーターの印を触ろうとしますがルシアスが止めます。
突然ハリーとロンを呼ぶ声が監禁室の中から聞こえます。ルナがいました。そしてオリバンダーもいるそうです。釘を取り出してロープを切ろうとします。暗くてなかなか切れませんが、ようやくデルミネーターを持っていることを思い出して、灯りをつけてロープを切ります。いろいろ呪文を試しますが脱出は不可能です。上からはベラトリックスの声と拷問を受けるハーマイオニーの悲鳴が聞こえ続けます。
ドアを閉めた瞬間、カチッという大きな音がしました。デルミネーターで灯りをつけると、ハウスエルフのドビーが現れていました。ロンはもう少しで大声を出すところでした。ドビーはハリー達を助けに来たと言います。エルフの魔法は人間のとは違って命令が有ればどこへでも行けます。聞けば人間を連れてでも移動できるようです。ハリーはドビーに、ルナ、オリバンダー、ディーンを連れて行ってまた戻ってきてくれるように頼みます。行き先はロンが決めました。ビルとフラーがいる海辺の家シェルコテージです。
私を殺しなさい、ヴォルデモート。喜んで死のう。しかしお前が捜している物は手に入らない。理解できないだろうが。
大きなカチッという音をたててドビー達は消えました。上でその音にルシアスが気づきました。彼はワームテールを呼びつけて調べに行くように命じました。ハリーとロンは監禁室に入ってきたワームテールに二人がかりで飛びかかりました。ロンは杖を持つ彼の手を押さえ、ハリーは彼の口を手でふさぎますが、ワームテールの銀色の手がハリーの首を締め付けます。ハリーはだんだん呼吸が苦しくなりますが、思いついて叫びます。
「グレイバック、欲しければこの小娘を好きにしろ」
ハリーは知らない場所に着きました。背中に剣を持ったグリフックがいるのがわかります。ドビーはじっとしています。体力の充電が必要なのでしょうか。ハリーはドビーとつないだ手をはずし、グリフックを下に降ろしました。
「で、キャンプしていたとでも言うのか、お笑いぐさだぜ、闇の帝王を尊敬していなくてあのお方の名前を平気で使うのは騎士団の連中ぐらいだ。この名前にはタブーが仕掛けてあるんだよ。これまでにも何人か騎士団の連中が引っかかったもんだ。今ももう二人捕まえてふんじばってるんだが」
3人は後ろ手に縛られ、先に捕まった二人と合流します。それはディーンとグリフックでした。
ハリーは、自分の父親は魔法省の役人で、自分はスリザリン出身だと言います。スリザリン寮の場所を聞かれますが以前に忍び込んだこともあるのですらすら語れます。グレイバックはちょっと困った様子になります。もし本当なら面倒なことになると。
ハリーの恐怖は傷を痛めさせ、ヴォルデモートに意識がつながりかけました。彼は今、高い壁に囲まれた塔を見上げていました。ハリーは必死で意識を戻そうとしました。ヴォルデモートと同化している場合ではありません。
ヴォルデモートは塔まで飛んでいきます。そして最上階の窓にたどりつきました。窓が少しだけ開いています。中ではブランケットに包まれて誰かが横たわっています。ヴォルデモートは蛇のように狭い窓を通り抜けて独房のような部屋に入り込みました。
「嘘をつくな!」
ヴォルデモートの怒りがハリーの傷にひびきます。
「連絡をするのは私だ。私の家で捕まえたのだから、私に権利がある」
「杖も持っていない者に何の権利があるって言うのよ。手を離しなさい!」
「失礼ですが、捕まえたのはあっしなんですがね。お金のことで言いたいのはあっしの方なんですが」
グレイバックが割り込みます。
「金ならあげるわよ……」
グレイバックを見たベラトリックスの手が止まります。その目はグレイバックの手下が持っている剣に注がれます。ルシアスが自分の腕のマークを触ろうとするのを逆にベラトリックスが止めます。
「触ったらだめ!あのお方が来たら罰を受けてしまうわ」
彼女はグレイバックの手下から剣を奪おうとします。グレイバックははこれは自分が見つけた剣だから譲れないと抵抗しますが手下は倒されます。スキャビオルが怒ります。
「何をしやがるんだ、このアマ!」
しかし4対1でも相手になりません。グレイバックを除いて全員が倒されました。
「この剣はどうしたの?これはスネイプがグリンゴットの地下倉庫にしまった物よ」
「あいつらのテントにあったんで」
「ドラコ、この倒れている連中を外に追っ払って。こいつらの息の根を止める根性があるんならやってもいいけれどね」
「ドラコにそんな命令しないで!」
ナルシッサが言います。
「あんたはどんなに大変な事態になっているかわかってないでしょ。この男は間違いなくポッターよ。闇の帝王は彼を望んでいるけれど、この剣のことを知られたらわたしたちがどうなることか。どうしたらいいか考えている間、こいつらを監禁室に連れて行って!」
「ここは私の家よ、命令しないで」
「すぐにやるのよ。どんなに危険かわかってもいないくせに」
ナルシッサはぶつくさ言いながらグレイバックに彼らを連れて行くように命じた。
「ちょっと待って、この汚れた血の小娘だけ置いていって」
「だめだ!残すなら僕にしてくれ!」
ロンが叫びます。
「もしこの娘がきちんと答えてくれなくて死んだら、その時はあなたの番だから。裏切り者は汚れた血の次、って私の本に書いてあるの」
ハーマイオニーだけ残されて残りの4人はグレイバックに連れられていきます。
「小娘の調べが終わったらちょっと味あわせてくれないかな。いやなに、ひと咬みかふた咬みでいいんだけれど」
ロンがふるえているのがわかります。地下の監禁室に閉じこめられました。上から悲鳴が聞こえてきます。
「ハーマイオニー!」
ロンが必死で叫びます。
「グリンゴットの私の倉庫にどうやって入ったの。正直に言いなさい!他に何を取っていったの。正直に言わないとナイフで切り刻むわよ」
ハーマイオニーの悲鳴が聞こえ続け、ロンは半泣きです。ハリーは何かないかポーチの中をさぐります。スニッチを振りますが何も起こりません。壊れた杖はもう生命がありません。鏡の破片が落ちました。ハリーのその中で青いダンブルドアの瞳が映っているのを見つけました。
「助けてくれ!今マルフォイ館の監禁室に閉じこめられているんです、助けてください!」
瞳はまばたいて消えました。今見たことが現実なのかどうかわかりません。何の変化もありません。
「どうやってグリンゴットに忍び込んだの。あの薄汚いゴブリンが手引きしたの?」
「彼とは今日初めて会いました。倉庫には行ってません。その剣は偽物なんです」
「偽物ですって?ばかげた話。あのゴブリンに聞けばすぐわかることね。ドラコ、ゴブリンを連れておいで」
ハリーは急いでグリフックに、あの剣は偽物だと言ってくれるように頼みました。ドラコが来ました。灯りを消します。中に入ってグリフックを連れて行きました。
ハリーの意識にまたヴォルデモートがいました。
「僕はお前の命を助けたことがある。魔法使いの恩義を破っていいのか!」
期待はしていなかったのですがワ-ムテールの手がハリーから離れました。ロンは彼の手から杖を奪い取りました。口を押さえられたままワームテールは意外な成り行きに驚きと恐れの表情をします。彼の銀色の手が彼の意識を無視して自分の首を締め付けだしたのです。ヴォルデモートが彼に与えた手はその持ち主を不要な人物と判断したようです。驚いてハリーとロンは手を引きはがそうとしましたがだめでした。ワームテールは息絶えてしまいました。
ハリーとロンは上に上がりました。こっそり覗くと部屋の中が見えます。
グリフックはグリフィンドールの剣を抱えて、これは偽物だと言いました。ベラトリックスは安心して闇の帝王を呼び出しました。
ヴォルデモートは呼び出しを知りました。彼が呼ばれるのはハリーに関することだけです。
私を殺せ。老人が言いました。お前は勝利することはない。あの杖は決してお前の物にはならない。ヴォルデモートが出した緑の光りは部屋中に満ちました。老人の体はベッドから持ち上がり、たたきつけられました。そしてヴォルデモートは窓から飛び出していきました。
「だめだーーーーー!」
ロンが飛び出し、ベラトリックスが振り上げた杖をはじき飛ばし、ハリーがキャッチしました。ドラコとグレイバックとナルシッサの杖が同時に火を吹きました。ハリーはすばやくソファーの陰にもぐりこみました。
「止めないと娘を殺すわよ!」
ベラトリックスが意識のないハーマイオニーを起こし、のどにナイフを当てています。
「杖を捨てなさい、でないと」
ナイフが押しつけられ、血が流れてきます。仕方なくハリーとロンは杖を捨てます。ドラコが杖を集めました。ヴォルデモートが近づいてきているのがわかります。
上で音がしました。シャンデリアが落ちてきました。ベラトリックスにまともに当たり、ハーマイオニーを放りだしました。ガラスが床に飛び散り、ハーマイオニーと剣を抱えたグリフックに当たります。ドラコも血だらけの顔を押さえます。ロンがハーマイオニーの体を抱きかかえます。ハリーも飛び出してドラコから3本の杖をもぎとります。グレイバックに呪文を掛けると3倍の強さで外に飛び出して地面に落ちました。
ベラトリックスがドアの側にいるドビーに気がつきました。
「お前が落としたのかい」
「ハリーポッターを傷つけてはいけない」
「お前はご主人様に逆らうのか」
「ドビーに主人はいない。フリーエルフだ。ドビーはハリ-ポッターと友達を助けに来た」
もう時間はありません。ハリーは杖の一つをロンに渡すと剣をつかんでいるグリフックを引きずり出し肩に背負い、ドビーをつかむと消えるように言いました。
固まったナルシッサとドラコが見えます。赤い髪の毛はロンです。銀色の物が見えました。たった今ハリー達がいた場所に向けてベラトリックスがナイフを投げたのです。
「ドビー、ちゃんとシェルコテージについたんだろうね」
初めて気がつきました。ドビーの胸に銀のナイフが刺さっています。
「誰か助けて!」
誰かが駆け寄ってくるのが見えました。魔法使いかマグルか、友人なのか敵なのかわかりません。ハリーはドビーを草むらに横たえました。
「ドビー、死ぬなよ!」
「ハ、リー……ポッ、ター……」
つぶやくとドビーは動かなくなりました。