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書評「魔眼の匣の殺人」 [書評・映画評]


魔眼の匣の殺人

魔眼の匣の殺人

  • 作者: 今村 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/02/20
  • メディア: 単行本


「屍人荘の殺人」で生き残った主人公二人は、事件の2ヶ月前に発行されていたオカルト専門雑誌で、2ヶ月後の事件がすでに予言されていたことを知る。さらには最新号で、公表されてない事件の黒幕とされる集団が作ったとされる施設で、超能力研究がなされていたと言う記事を見つける。該当地におもむく二人が出会ったのは、10分後に怒る出来事を予知するという予知能力を持った女子高校生と、彼女を崇拝する後輩の二人連れ。どうやら目的地は同じらしい。そしてたどり着いた魔眼の匣という施設で、偶然居合わせた計11名が、女子高校生の予知通りに外界とつながる橋が燃え落ち、2日間で4名が死ぬという予言の中で過ごすこととなる。そして一人一人、死んでいく中、明らかな殺人もあり、次は誰が殺されるのか、疑心暗鬼の中、主人公の名探偵が姿を消す!

超能力者が犯人だというのはアンフェアの極みだが、予言だけで殺人は起こせない。だから他の人の過去の作品でも予言に従って探偵が行動を起こす物語は成立する。ただし、超能力自体を解明することはない。同時に呪いの真偽も問わない。だから結果的に呪いが実行されたとしても偶然と言い切るだろう。呪いを避けたいと言うことが犯罪理由としても、心理状態で追い詰められたという結果だけで、科学的には解明されないだろう。

物語は最終章前にすべて解決したかのように思われて、実は、という驚きのどんでん返しが最終章に待ち受けている。絶対に最後から読んではいけない本だろう。

前作の映画では浜辺美波が演じた役だが、読んでいると吉高由里子の声しか聞こえてこない。年齢的にはちがうんだけど。

文中の違和感やらミスリードやら、ミステリー小説としては最高のできばえ。まあ孤立したところから、どうやって救助されたのか知りたい気もあるが。

今回は登場人物の年齢もバラバラで人物の区別がつきやすかった。イメージ映像は全然浮かばなかったが。

前作ラストでは「僕はあなたのワトソンにはなれません」と言っていたのが、今回は「私は君のホームズにはなれない」って。別にホームズとワトソンでなくてもいいんだけど。




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書評「屍人荘の殺人」 [書評・映画評]


屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 今村 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/11
  • メディア: 文庫


映画が面白かったので原作も読んでみた。

結論から言えば、悪くはないんだが、映画の方が面白かった。
原作は、ホラー映画を撮る合宿で本物のゾンビに襲われる状況は、昨年大ヒットした「カメラを止めるな」とかぶってしまうので、映画ではロック研究会に変更。別に映画研究会である必然性がないからこれで十分。ただ、映研だけに学生人数が多すぎる。同じ大学生11人にOB3人では、年齢構成が近い分キャラの違いがわからない。話が終わっても結局名前だけでは見分けが付かなかったのもいたり。映画では、外聞から非難してきた3人が加わることで、同じ大学の学生、OBの数が減ってわかりやすくなっている。
映画と違って小説だから、すべての疑問の答を出さないといけないということで、物語が説明過多の饒舌になっている。映画では外部での事件の原因などが省略されていて、わかりづらいけれど、その分、内側の関係性は明確になっている。映画ではこれでいいんだろう。

重要な点が一つ。ミステリー小説として、ぎりぎりアンフェアな部分がある。確かに説明もあり、当人も「嘘をついている」と表明しているのだが、語り手でいるべきワトソンが嘘をついたらやっぱりまずいでしょ。しかもそれが犯人を知ってかばうことになるんだったら共犯者になってしまう。これはやはりアンフェアだと言わざるを得ない。

でも、この探偵とワトソンは魅力たっぷり。続巻を購入してしまった。申し訳ないが、明智君には何の興味も引き起こされないので、彼の短編が出ているが読む気にはなれずに無視した。

もう一度結論を言おう。
この物語は人物関係さえ認識できればきわめて面白い小説だが、映画の方がずっと面白かった。


(追記)
小説版を読んでから、正月にもう一度映画を見に行った。
やはり映画は面白い。原作と若干登場人物の設定を変えた分、原作にはない別の伏線を付け加えていたのだが、その部分が、原作でワトソンが真犯人に気づいた部分を映像の都合上カットしたのをうまく補完していて、演出が生きていた。
クライマックスの決め台詞、「渡さない。彼は私のワトソンだ!」がもう一度聞きたくてリピーターしたのだが、原作ではクライマックス途中のセリフを、映画ではまさしくラストに持って来ていたのが効果的だったし、ラスト直前に槍を投げ落としたことが最後に生きてくる演出も効果的。もっともなぜ最後にあのシーンなのかは疑問には残るが。
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映画「屍人荘の殺人」 [書評・映画評]

屍人荘の殺人.jpg
部員2名の学内ミステリー研究会の自称名探偵明智恭介(中村倫也)と、ミステリーオタクなのに、一度も推理を当てたことがない葉村譲(神木隆之介)は、不幸な事件ばかりに巡り会うために難事件を解決するしかない本物の名探偵剣崎比留子(浜辺美波)に、ある合宿に参加するように要請される。事件予告もあり、昨年に奇妙な出来事もあったという、ミステリーオタクには垂涎の要請で、なぜ彼らに依頼したのかは秘密にしてほしいという。

そして時を同じくして彼らが参加した場所で行われていたロックフェスで無差別殺人事件が起こり、被害者はすべてゾンビ化するという出来事に遭遇。合宿参加者に逃げおおせた一般客を含めてある山荘に閉じ込められることになるが、明智一人はゾンビの中に埋もれてしまう。押しかけるゾンビ達。そして山荘内でも連続殺人事件が起きる。
知能をやられたゾンビにはできない殺人方法に、彼らの中に犯人がいる可能性が。
比留子と葉村は事件解決を試みるが、ゾンビはとうとう山荘内にも入り込んだ。

という、決してネタバレさせてはいけない超絶ミステリー。この主人公二人のコンビネーションが見もの。おかしくもおそろしくも悲しい物語が始まる。

浜辺美波の映画を見るのは3作目になる。
最初に見たのは、実の父親に誘拐される「エイプリルフール」。荒削りながら印象深い役で名前を覚えた。
次があの「君の膵臓を食べたい」。彼女がヒロインだと知って見たのだが、残念ながら、脚本と演出がひどすぎて、小栗旬と北川景子が原作の良さをぶち壊してくれた駄作になってしまったが。
そしてこの作品で、浜辺美波の良さが実によく出ている。当たり役になりそう。原作で続編が出ているが、ぜひとも次もやってほしい。

ゾンビの中に埋もれてしまった中村倫也。そのまま映画の内容からも埋もれてしまったかも。
神木隆之介はこんな役がぴったりだ。主人公のはずなのに、決して中心になれない。主役なのに、主役の座を奪われる。でも惜しいんだよね。

名探偵は殺人事件が起きる前に犯人を言い当てていた。うん、それだけなら僕でも当てていたけれど。葉村が気づいたあること。僕も気づいた。だから犯人がわかったが。まあどのようにして犯行が行われたのか、無理はあるけれど納得は出来る。

お約束ながら、最後に助けが来るのは都合が良すぎるきらいもあるが。そしてゾンビの話は何も解決していないという。原作ではどうなっているんだろうか。即原作を買いに行った。まあとにかく映画は面白かった。

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