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書評「風間教場」 [書評・映画評]


風間教場

風間教場

  • 作者: 長岡 弘樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: 単行本


警察学校の風間教官は、新年度が始まる数日前に、新しく赴任してきた新校長に厳命された。
今期は一人も脱落者を出すな。もし一人でも途中退校者が出れば君にもやめてもらう。
しかし、仮入校から入校式の一週間の間に、少なくとも5・6名の生徒が途中退校あるいは転職を考えているような雰囲気を感じてしまった。はたして半年間、一人も脱落者が出ることなく卒業式を迎えられるのか。

いつもは短編小説を並べた物だが、今回は半年間の長編小説となる。と言っても、本来、一人の生徒の事件が終わって次の事件が始まるなどと言うことはない。半年間複数の生徒が複数のそれぞれの事情を抱えて、物語は並行して続く物である。だから、別々に考えればこれまでの物語とそんなに違いは無いと言っても良い。

今回も7・8人の生徒のそれぞれ別々の事情による物語が語られる。同じクラスで半年間過ごすのだから、人物関係は重なっているのが当たり前。

今回は長編にあたり、過去に登場した二人の人物が出て来る。

一人は、風間が右目を無くした事件にいた元女性刑事。なぜか風間の助手として同じ警察学校にいる。ひょっとすれば、風間の右目を無くしたことに自責の念が働いて、彼の右目代わりになろうとしてやってきたのかもしれない。しかし逆に言えば、新校長より、彼女を一人前の教官に育てることも使命の一つだと言われ、そのつもりもあるので、風間は生徒と教師の両方を見る立場に立たされてしまう。
しかしこの女性、単なる風間のイエスマンではない。なんでも過去の生徒で風間がクビを言い渡そうとしたのに真っ向から反対して、激論の末風間の主張を退けて生徒を無事に卒業させたらしい。

もう一人はこのシリーズの第1話に登場した元生徒(今は立派な警官)。ただしこちらは、ドラマで言えば友情出演並みの扱い。冒頭一週間と卒業式前に2回だけ登場。本当のゲスト扱い。

残念ながら、この風間教官シリーズ、ある事情で今作で終了のようだ。
もちろん警察学校そのものはなくなりはしないのだから、別の人物が教官となって別のシリーズが始まる可能性もあるのだが。

関係ないが、この風間を追いかけてやって来た元女刑事。あちらの物語では最後に二つの課題(自分へのストーカーを何とかするのと、風間を刺した犯人を捕まえるのと)があったのだが、それはきちんと終わらせてからやってきたのだろうか。

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