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書評「新釈 走れメロス 他四編」 [書評・映画評]


新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2009/10/15
  • メディア: 文庫


日本の古典文芸作品短編5作を、京都大学生を主人公に置き換えた短編集。
内容は「山月記」「薮の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」の5作。

元作品があって、それを面白おかしく茶化したものをパロディーと呼ぶのに対し、元作品のテーマを生かして続編や別解釈で改めたりしたものをオマージュと呼んだりする。この作品集はその中間というべきか。

元の5作に関連性はまったくないが、この作品集では連作として同じ時間を共有する京都大学生を主人公にしている。特に「山月記」の主人公がどの作品にも関わってくることで統一感を出している。その必要があったのかどうかはわからないが。

「走れメロス」では主人公が京都の町なかを移動しまくる。固有地名が多いためにわざわざ地図がつけられている。関西人ならある程度わかる地名もあるが、実際には京都に何度も通ったことのある者でなければ土地勘とか地図があってもつかめないかもしれない。

この5作の中で元作品を読んだのは「山月記」「薮の中」「走れメロス」の3作だけ。他の2作は知らないから、どこをどう生かしているのかわからないので本当には楽しめない。借りてでも読めばいいんでしょうが短編だけに見つからなかったり。
読んでないから言えるのだろうが、「桜の森の満開の下」が面白かった。元を読んでみたくなるくらい。
既読の3作品は元を知っているだけにどうしても比較しながら読んでしまうので損をしてしまう。「走れメロス」は原作の逆パターンで完全なパロディーなのだが、好みの問題でついていけない人もけっこういるだろう。「薮の中」はもっといじりようがあったのではと思ってしまったり。

現代風大学生気質が気に入らないという人には合わない作品集だと思う。
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