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映画「悪夢のエレベーター」 [書評・映画評]

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4人の男女がエレベーター内に閉じ込められた。外部とはまったく連絡が取れない。
4人はそろいもそろって秘密をかかえた者同士だった。

見事なミステリーである。なんと仕掛けが二重になっている。物語途中に大どんでん返しがあり、ここはある意味予測可能な範囲だったのだが、後半ネタ晴らしが続いて展開になれきった後、ラストにあっと驚く大どんでん返しが用意してあった。ここまでは読み通せなかった。考えれば伏線はちゃんとあったのだが。

閉じ込められた4人は秘密を知られないようにしていたのだが、その中に、手に触れるだけでその人物の過去を読み取る力のある男が紛れていたために4人の秘密が明らかにされてしまう。
超能力男(モト冬樹)はその力のために化け物扱いされていじめられた人生がある。ジョギングの帰りにエレベーターに乗ってマンションの部屋に帰る所だった。
怖ろしくへたくそな関西弁を語るやくざ風の男(内野聖陽)は空き巣狙いの常習犯で刑務所から出てきたばかりだと。今日もこのマンションのある部屋に忍び込む予定だった。
若い男(斎藤工)は臨月の妻(本上まなみ)がいるにも関わらず、このマンションに住む女性(芦名星)を愛人にしていたのだが、この日子どもが生まれそうと言う緊急電話でエレベーターに乗り合わせたのだ。
若い女性(佐津川愛美)が一人。強烈ないじめと無視で引きこもりになり、一人心を許せる姉が結婚で家を離れた後、学生アルバイトの派遣カウンセラーがたまに帰ってくる姉目当てで家に来ることに気づいて派遣センターごと放火、そして人生が嫌になりこのマンション屋上から身投げをするつもりでやってきていた。

さて、この4人は無事にエレベーターから脱出できるのか。

映画途中である人物が奇妙な違和感に気づく。
実は、映画冒頭に原作にないシーンが挿入されているとか。原作の中のある人物の台詞からイメージされる情景を、監督のタレントでもある堀部圭亮が付け加えて印象深い演出にしたのだが、逆にこのおかげで僕にとって奇妙な違和感を最初に感じてしまった。そして映画の中の人物が物語り途中で気づいた違和感もきわめて早い時点で感じていた。
そして物語は後半思わぬ展開につながるのだが、陰のある女性役の佐津川愛美の演技が光る。最初に登場する場面では、閉じ込められたエレベーターのドアを叩く男の目に、ドアに写る怖ろしい女性の陰として登場し、もうホラー映画そのものの怖さで実に怖ろしい登場なのだが、見事にギャップのある役をその後見せて観客をまず驚かせる。彼女の演技がピカ一かも。
余談ながら、佐津川愛美のデビュー映画見ていたりする。時代劇でヒロインの少女時代を演じていて、目立たない子だなという印象が残っていたり。ちなみに相手役で主人公の少年時代を演じた石田卓也はこれもデビューながら最初から光っていたが。

閑話休題
物語は巧妙に仕掛けられた筋書きから思いも掛けないハプニングにつながり、滑稽でもあるのだが、最後のどんでん返しで再び恐怖に落とされる。すべてが計算されたものだったことに驚かされるのだが、種明かしが終わった段階で映画は終わる。原作もそこで終わっているようなのだが、なんと親切な作者はその続編を「奈落のエレベーター」として発表してくれている。
どうしても続きを知りたい人は本を買って読めばいいという、なんと親切な。ということで、原作本も2冊買ってしまったではないか。

観客のだまし方としては最高だろう。反対の反対は元に戻るとか、嘘を言っていること自体が嘘となると実は本当だったとか。原作もたぶん面白いと思うが映画も最後まで飽きさせずによくできた映画になっていると思える。

悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)

悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)

  • 作者: 木下 半太
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫

奈落のエレベーター (幻冬舎文庫)

奈落のエレベーター (幻冬舎文庫)

  • 作者: 木下 半太
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 文庫


追加

ちなみに原作も一気読みしたけれど、悪くはないけれど映画の方がすっきりとしていいですね。原作は映画で省略した部分、けっこう気分悪かったりして。
続編の方は最悪。本がじゃなくて内容がバッド・エンディング。ここまでやってくれるか、というとんでもない終わり方。映画であえて設定を変えた部分をふくらませてひどい結末に持って行った。さすがにこちらの映画化は無理、というかやめた方がよい。

映画を見た段階ではこの登場人物達で別の物語があってもいいかとは思ったのだが、続編ではまったく不可能にしてくれてます。題名は「奈落のエレベーター」だけれども、内容的には「悲惨なエレベーター」とした方がよかったかも。
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