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映画「紀元前1万年」 [書評・映画評]

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絶滅寸前の狩猟民族が、文明を持った民族の労力確保のために襲われ、仲間と、彼らの運命を変える女性をさらわれ、女性を愛する男が取り返すために過酷な旅に出て、自分こそが伝説の勇者であることを知らされ、仲間を増やして高度な文明社会の「神」に立ち向かい、予言を果たして彼らの部族を存亡の危機から救い出すまでの物語。魔法使いこそ出ては来ないが、勇者に戦士に賢者がそろい、予言の「しるし」もあったり、さらには奇跡まであるのだから、舞台を超古代に置き換えたファンタジーと言っても良い。

 ある狩猟民族がいた。村の近くをときたま通り過ぎるマンモスを倒して食料とする以外に生活手段がない。そのマンモスを倒すことのできた者こそ村の長になる資格を持つ。主人公デレーの父は長であったが、村が絶滅寸前であることを感じて、友人ティクティクに後を託して一人村を離れていった。事情を知らない村人は彼を裏切り者と呼び、成長したデレーも仲間はずれにされかねない状況だった。
 巫女の予言で村の絶滅の時期が近づいていることが語られた。しかしある村人が連れ帰った青い目の少女エバレットが村の救い主であった。巫女の予言はエバレットが村を救うことを告げていて、同時に「四つ足の悪魔」が村を襲うが、一人の勇者が村を救い、エバレットと結ばれて村が生き返るだろうと。
 お互い村ではひとりぼっちのデレーとエバレットは気が合い、大きくなった二人は愛し合う仲となったが、「最後の狩猟」のときにマンモスを倒した者がエバレットと結ばれることが告げられる。人々は人望がある若者達のリーダーであるカレンが継ぐ物と思っていた。彼こそ長にふさわしい人物であった。狩猟の日、男達は集まってマンモスに立ち向かう。偶然がデレーにほほえんだ。罠の網にもつれて一人マンモスに連れて行かれて、逃げるさなか槍がマンモスに突き刺さりマンモスは自滅した。長はデレーに決まり象徴の白い杖が渡されるが、自分がマンモスを倒したのではないことを一番よく知っているのはデレ自身であった。父の友人である今の長ティクティクに指摘されて権利を返上し落ち込むデレーだった。
 破滅の日が来た。文明を誇り「四つ足(馬)」に乗った民族がやってきた。彼らは空から降りてきた民族とも、海に沈んだ大陸から渡ってきたとも言われている。彼らはピラミッド建設のために奴隷を狩る目的でやってきてあっというまに捕虜がかり出され、そしてエバレットの美しさに目を留めた隊長が彼女をも連れて行った。彼らから一同を取り返すことは不可能に思われた。しかしデレーはカレンとティクティクを連れて取り返す旅に出かけた。こっそりついてきた少年も仲間に加えて。
 一度はエバレットを取り返すことに成功したかに見えたが、デレーが森の怪物と戦っている隙にカレンや少年と共にエバレットも取り返された。傷ついたティクティクを助けながら食料を見つけるためにデレーは一人獲物を探すが、落とし穴にはまり、そこにいたサーベルタイガーを偶然ながら助けることになる。このことが奇跡を産んだ。文明族に襲われたばかりの村に入った二人は残った村人に襲われるがサーベルタイガーが助け出してくれた。村の長はデレーを伝説の勇者だと言った。「牙と会話する者」が自分たちを救い出してくれるという予言があった。なお驚いたことは長はデレーたちの言語を使えたが、それを教えたのがデレーの父親だったということだ。長の息子も奴隷に連れて行かれたそうだが、その息子とデレーの村の少年が親しくなっていたことは偶然ではないだろう。
 文明族に襲われた各地の村に伝令が送られた。予言の救世主が現れたと。救い出しに行く仲間が大勢集まった。しかし旅は困難を極める。文明族は川を船で下っていったが砂漠を歩くしか方法はない。方向がまるでわからない彼らに希望の星がひらめく。
 また、文明族の「神」を倒すには伝説の勇者だけでは不足していた。「しるし」と呼ばれる物がなければいけないと。しかし、その「しるし」はエバレットが持っていたことを誰も知らない。かくして大文明を誇る民族と単なる狩猟民族との戦いが始まった。

最初からファンタジーだと思えば素直に楽しめる物語である。予言があってそして予言通りに物事が進んでいき、知恵と勇気を持って強大な敵に立ち向かう。一人の平凡な男が勇者へと成長していく物語は、この長さがちょうどいいかもしれない。予定通りの成り行きも、子どもから楽しめる物語としてはいいかも。歴史の知識は何もいらない。あえて言えば、狩猟民族が農耕民族に変わっていく過程の物語と理解すればいいが。
昔「人類創世(クェスト・オブ・ファイアー)」という原始時代を描いた映画があったが、火を失った部族が火を取りに行く物語で、やっと手に入れて持ち帰った火をうっかり川にはめて消してしまったが、連れ帰った別部族の少女が火のおこし方を教えたという物語。若干今で言えばPG-15くらいの規制があるのが惜しいが、原始時代が一つの時代を産み出していく過程の物語として面白かったが、逆に言えばそれだけしかない物語だった。それに比して、こちらの映画は時代以降的な物語でもあるけれど、主は成長物語でありファンタジーであり内容的には深かったと思う。まあBC1万年であれだけの文明を持ったところはどこだろう、などと思ったり、UFOからやってきた民族かアトランティス大陸の生き残りかと思わせるような設定でこういうのも面白いが、あれだけの文明社会を作れば遺跡くらい発見されていてもおかしくはないと思ったり。あるいはある意味バベルの塔の崩壊も思ったり。そういえばバベルの塔自体も遺跡自体は発見されていないからそれをも意識しているのかもしれない。文明国の人間がしきりに話しかけるが最初から最後まで言葉が通じないままというのもあるいは意味深かも。(通訳が一人だけいたけれど、その場面はおいておいて)


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