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映画「悪人」 [書評・映画評]

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出会うのが遅すぎた男女の逃避行の物語。

出会い系で知り合ったOLを殺してしまった男が、誰かにすがりつきたくて、
たまたま連絡をしてきた、まだ会ったことのない同じ出会い系で知り合った
女性とゆきずりの関係を持つが、お互いに惹かれあい、自首を決心した男を、
この関係を何もなかったことにしたくなかった女性が、逃避行の道を選んで
いく。

殺人犯人は確かに悪人だが、でも捕まることのない悪人が世間にはいっぱい
いる。

殺された被害者を車から蹴り落として見捨てた大学生は、殺人事件に関わった
出来事を、さも面白おかしく友人達に語っていく。がまんができない友人が
一人だけいた。
マスコミの容赦ない攻撃に犯人の祖母はただ耐えるしかない。乗り込むバスに
まで追いかけてきて、がまんできないバスの運転手がマスコミたちに怒鳴り
つけ、老婆に優しい言葉を投げかける。

その老婆から大金を奪い取る悪徳商法の男達はまったく反省さえしない。

表に名前が出てくるすべての役者がいい演技をしている。一人もはずれがない。

物静かに演ずる犯人の祖母役の樹木希林と、被害者の父親役の柄本明は
ベテランらしく重厚な演技で物語を盛り上げていく。助演男優・女優賞なみだ。
岡田将生は「告白」では空気の読めない、利用されていることに気がつかない
熱血教師をうまく演じていたが、今回も、物語的には嫌われるしかない大学生
役を見事に演じきっている。
被害者のパッパラパーなOLを満島ひかりが頑張っている。こんなOLなら
殺されてもしかたがないだろうと思わせるくらいに。それでいて、父親の前に
亡霊として現れる場面では、生きている時の父親との対話とは打って変わって、
どうしてこんなことになってしまったのだろう、という悲しみが無言でうまく
演じきっている。
ほとんど無言の友人の大学生役の永山絢斗も、無言のうちに友人達に対する
いきどおり、やりきれない思いをぶつけている。

悪人達が多い世の中で、まだまだ一般人の中にはまともな人も大勢いるんだ、
ということが安心させられる。

主人公二人は、出会うのが遅すぎたと思ったのだろうが、早かったならおそらく
出会ってはいなかっただろうと思われる。遅すぎたからこそ、本当に自分が
望んでいる相手が誰だったのか見つかったのだろう。

悲しさだけが残る物語。誰にも救いがない。

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