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書評「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」 [書評・映画評]


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

  • 作者: 岩崎 夏海
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/12/04
  • メディア: 単行本


高校野球のマネージャーになりたての女子高校生が、勘違いして「マネジメント」の本を買ってしまい、その解説に従って、弱小野球部を甲子園出場まで導いてしまう物語。

著者はAKB48創設に関わってきた人物で、メンバーの峯岸みなみをイメージして主人公の名前もみなみとして書いたという。もっとも映画化に当たっては彼女の演技力はまだまだなため、AKBで演技力No.1の前田敦子が主役に選ばれることに。峯岸みなみは後輩のマネージャー役だとか。まあ重要な役ではあるが。

経営学の本である。勘違いとは言え、経営学の具体例として野球部に当てはめるとどうなるのかという観点から書かれた物であるため、中学生以下がこの本を読みこなすのはまず無理だろう。

余談だが、数十年前に読んだ話で、製品の改良を行うのに、まるで関係のない物を取り上げ、その長所欠点を改良したい製品に当てはまるとどうなるのかという観点から新製品のコンセプトを作り上げるという話を聞いたことがある。たとえば、洗濯機を改良するのに、ジェット旅客機と比較することで改良するという。乗り心地がよい・到着まで速いとか、これを洗濯機に当てはめるとどういう意味になるのか。そういった話と似ているかも知れない。

しかし

物語としてはきわめて陳腐である。

現実的にあり得ないシチュエーションばかり。これで弱小野球部が激戦地区を勝ち抜けて甲子園に行けるのなら、どこの高校野球部も苦労はしていない。
新米マネージャーの意見ががこんなに簡単に部員に受け入れられるはずがない。たとえ彼女が実は野球経験者だったとしても。

あまりにも主人公に都合良くできすぎている。
・監督も選手も、実は素質抜群で練習方法が的確でなかっただけのことで埋もれていた。
・チーム全員が実に素直に聞く耳を持っている。
・たまたま部員の中にマネジメントに詳しい部員がいた。
・入院中の女子マネージャーのことを部員全員が信頼して心を開いている。
・前監督が保護者とのトラブルで首になったのに、今回は一つも保護者からのクレームがない。
・いくら効率よい練習をつんだとしても、こんなに簡単に並み居る名門校を押しのけて勝ち進めるはずがない。
・チーム改革を行ってから一つもトラブルも挫折も起きない。メンバーが納得しすぎ。

はっきり言って対戦チーム弱すぎ。

ストーリ-展開もありきたり。初めから結果が見え透いているし、見せ場のはずの試合場面も読めすぎている。現実的にまったくあり得ない。相手選手、そこまでバカじゃないだろう。

そもそも小学生時代とは言え野球経験者の主人公が「マネージャー」を知らないはずないだろうし、間違って本を買うはずもない。病気で倒れた友人のピンチヒッターとしてマネージャーについたのなら、なおさらそこまでのめりこむはずもない。そんなに簡単に甲子園に行けるなどと思うはずもないのだから。ずぶの素人ならまだ可愛げもあるかもしれないが。ならば野球経験者という過去を設定から外した方がまだよかったかも。はっきり言って蛇足かも知れない。


まあ、経営学というのが現実のいろいろな部分に当てはめることが可能、という発想はいいけれど、これが万能だと思わせるのもどうなのか。現実はそんなにうまくはいかないよ、と注意を与えたい。


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