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書評「りゅうおうのおしごと」 [書評・映画評]


りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

  • 作者: 白鳥 士郎
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2015/09/12
  • メディア: 文庫


タイトルを見てRPG関係のお話しかと思った方、残念でした。
冒頭2ページを読んで、ロリコンの変態小説と期待された方、お気の毒でした。

この世界を知ってる人には冒頭の1行読んだだけで、作者のいたずらにすぐに気がつくでしょう。おそらくはページをめくるまでは遊ぶんだろうなと。その通りでした。

ラストのクライマックスシーン。16歳の主人公男子が9歳小学3年生の女の子のヒロインあいと並んで、あいの両親の前で土下座して、「あいさんを僕にください」と頼み込む場面。作者はわざと言葉足らずにしてある。

中学で将棋のプロになった九頭竜八一はプロデビュー2年のビギナーズラックで、将棋界最高位である「竜王」のタイトルを取ってしまう。そしてタイトルの重さに負けて直後から11連敗。世間からは「クズ竜王」と罵られる毎日。そんな16歳一人暮らしの彼の元に現れたのが、小学校3年生の可愛い少女雛鶴あい。老舗の有名旅館の跡取り娘であった彼女は、その旅館で闘われた竜王戦最終局で、タイトル奪取の手に気づいて震えてしまった主人公の意識を正常に戻したことで、主人公から無意識で「タイトルを取ったら何でも言うことを聞いて上げる」と言った言葉を真に受けて、竜王の弟子にしてもらうためにおしかけ弟子志願にやってきたのだった。

将棋を覚えて3ヶ月という彼女を追い返すため、ぼろぼろにやっつければいいと思った主人公だったが、彼女の持つ非凡な才能に気づき、彼女を育ててみたいと思って16歳の一人暮らし男と9歳の少女の同居生活が始まる。今回の第一巻は彼女が正式に弟子になって同居を始めることになるまでの物語。

って、結論を言ってしまっていいのかと思うのだが、この小説自体、プロローグと書かれている話が実は後日談、エピローグなんだからいいんでしょう。

ロリコン変態小説を期待した人、安心してください、ちゃんと本編では風呂上がりの全裸の少女に主人公が覆い被さる場面も出てきますし。それに主人公のことを「ロリ王」と世間の人が罵るなんて話も出て来るし。
それに加えて三角関係になりそうな、10年来のつき合いの、2週間だけ入門が早いため姉弟子と呼んでいる2歳下のツンデレ彼女も登場して修羅場の連続。

で、前述の土下座場面。正確に言えば、「あいさんを(竜王である僕の将棋の弟子として)僕に(預けて)ください」となるのだが。あえてぼかすことで、本編でも即日に「竜王土下座事件」としてネットで拡散。そして炎上。主人公は「竜王」に加えて「ロリ王」の複数冠を持つ者として世間の笑いものとなる。

一応真面目な将棋小説であり、監修は関西の若手プロ棋士集団の「西遊棋」が全面協力。また現実の将棋会館描写や近辺を始め、タイトル名や棋士の呼称も了解を得られたものについては実名を使っている。だから対局場面は力が入る。読むだけで力が入ってくる。熱いよね。
余談だが関西の影響を受けて、関東若手集団も「東竜門」というグループを作って両者はよい関係で競い合っている。

もちろん、フィクションならではのありえない場面もいろいろ。
たとえば主人公と2歳下の「姉弟子が小学校入る前に師匠の元に預けられて10年過ごすとか。彼らの親兄弟はどうなってるんだろうかなど。同じ将棋小説(コミック)でも「3月のライオン」だったら主人公の家族は事故でみんな亡くなっているから預けられていたのは理由がつくのだが。
また、16歳の男と9歳の女の子の二人暮らしって、親が認めたと言ってもありえないでしょう。ネタバレだけど、最後には責任取って婿養子にさせられる約束をとりつけられて、住み込みの内弟子生活が認められるんだが。

はちゃめちゃな物語に見えて実は熱血小説であったり。何より、タイトル取ったばかりに駄目人間になった主人公が、弟子の登場で復活していくストーリーは熱い。将棋場面にはウソがないというのもいい。

しかし

「棋士のズボンには利き手の側だけ膝に皺が寄る」って本当なのかな?

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