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感想「謎解きはディナーのあとで」 [書評・映画評]


謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/09/02
  • メディア: 単行本


ミステリー小説と思わせるユーモア小説である。
いわゆる「安楽椅子探偵」の形を取っている。探偵は現場にはいない。すべての情報を
もれなく聞いた後、警察その他が頭を抱える謎を解き明かし、犯人をずばり言い当てる
というもの。

これには大きな欠点がある。推理はすべて可能性である。論理的に考えて
すべて矛盾なく辻褄が合うように考えればこういう場合、この人物が犯人である
可能性が一番高い(他の人物が犯人ではあり得ない)。
実際に現場に行ったり、容疑者にあったりしていないのだから証拠はない。
状況証拠だけである。

だからこの安楽椅子探偵では実際に行動する人物の描写が重要。彼と犯人との
対決とかも重要物になる。

しかるにこの物語では謎を解明してそれで終わりである。犯人が逮捕されたのか、
どのような逮捕劇があったのか、それがまったく描かれない。ましてや探偵が
犯人と格闘する場面など……

と思っていたら、作者もそのことを指摘されたのか、最終話で対決させている。
推理だけでそれが本当に真相なのか、6話のうち2名だけが自分が犯人だと
認めている。最後になってそうきますか。

しかし最初に言ったように、この小説は純粋なミステリー小説ではない。
あくまでユーモア小説なのだ。主人公の女刑事に対して暴言はきまくりの
若い執事とのやりとり。偉そうな上司と主人公の珍妙な会話。しかも
心の中でバカにしまくっている上司の思考と主人公の思考が実際には
ほとんど同じだという珍妙さ。
自分の身分をひけらかせて自慢たらたらの上司に対し、自分はずっとずっと
上なのにひけらかしていないぞという態度の主人公だが、実際には
五十歩百歩であることに気づいていないばからしさ。

実際にはミステリー自体はそんなに難解ではない。それこそ
「お嬢様の目は節穴ですか」「ひょっとしてお嬢様はアホでいらっしゃいますか」
という暴言が、実は読者の言いたかったことを代弁しているのかも知れない。
終わりの2話が書き下ろしとか。そこで別の家の執事を出してしまうのは
どうなのか。事件にこの執事が重要人物としてからんでくるのがミエミエに
なっている。

コメディー部分は堂本剛と水川あさみのかけあいドラマ「33分探偵」を
彷彿させたり、お嬢様刑事なら深田恭子の「富豪刑事」を連想したり。
もっとも富豪刑事は大富豪であることを生かしてとんでもない方法で
事件解決をするのだが、こちらはあくまで隠そうとする姿勢なので異なるが。
今度北川景子と櫻井翔でドラマ化だとか。いまひとつイメージがわかない。

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