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ハリーポッター死神の秘宝・第15章「ゴブリンの報復」 [書評・映画評]

第15章「The Goblin's Revenge」

ホークラクス探しの旅が始まりましたが何の成果もありません。
3人のテントの近くで2人のゴブリンと3人の人間の話が聞こえました。ホグワーツでの出来事が聞かされます。また思いついたある方法で詳しい話も聞けました。ジニー、ネビル、ルナに関する情報と、ハリーが受け取るはずだったグリンゴットの剣についての情報です。
しかし深刻な事態も起きました。とうとう3人の関係にひびが入って、取り返しのつかない結果が起きます。

朝早く起きるとハリーは外に出て大きな木の根元にマッドアイの目を埋葬しました。何もない場所だがアンブリッジのオフィースのドアよりましでしょう。
ここに来て最初に話したように、毎日移動することにしました。同じ場所に長くいるのは危険です。
とりあえず食料を調達するためにハリーが外に出て行きましたが手ぶらで帰ってきました。あたりはディメンターがうようよしているのですが、どういうわけかパトローマスが一つも出せなかったといいます。まるでホグワーツ行き列車でディメンターに襲われた13歳の頃に戻ったみたいです。ハーマイオニーがその理由に気がつきました。ホークラクスのロケットを身につけているせいです。首からロケットをはずすととたんに重い荷物を降ろしたかのように気分が軽くなりました。
ハーマイオニーは身につけないでテントの中に置いておく方がいいと言いましたがハリーは猛反対します。盗まれることもあるかもしれないし置き忘れるかもしれない。身につけていても記憶がなくなるとかじゃないから。ということで、24時間以上は身につけずに交替でつけるということにしました。ハーマイオニーがつけると料理でミスの連続です。ロンがつけると不機嫌になりました。後にはゲームをして当たった人がありがたくない褒美として24時間の不快感を味わうということにもなりました。

さてこれからどうしようかという話になります。ヴォルデモートに縁のある場所にホークラクスは隠されています。生まれ育った孤児院、ホグワーツ、店員として勤めていた店、長い期間住んでいたアルバニア地方。ロンはアルバニアに行くことを提案しますがハーマイオニーはそこにはないと言います。アルバニアに行くまでにホークラクスは5つ隠していたと思えるし、ダンブルドアの話では6つめは蛇に違いない。蛇はアルバニアではなく彼、ヴォル……
「その名前はダメだって言ってるだろ!」
おそらく彼のそばにいるでしょう。
ハリーが何度も見た記憶では勤めていた店には隠していませんでした。ハリーはおそらく一つはホグワーツに隠していると主張します。でもそれならばダンブルドアに見つけられているはずだと反対されます。でもダンブルドア自身ホグワーツの秘密の場所をすべて知っているわけではありません。「例のあの人」にとって初めての自分の場所であり十分にふさわしい場所です。
「彼がダンブルドアに教員職を頼みに言ったとき、ホークラクスを作ることも目的にして行ったのかもしれないって言ってたわよね。でも彼は教師にはなれなかったのだからホークラクスを作って隠すチャンスはなかったでしょう」
「ああわかった。ホグワーツのことは忘れよう」
でもハリーはそれでもホグワーツに隠しているようにどうしても思えました。

別に目当てもなく彼らはロンドンに行きヴォルデモートが育った孤児院をこっそり覗きました。孤児院の図書館で彼に関する記録もすべて調べ上げました。でもここにはどうやらなさそうでした。この孤児院はヴォルデモートが逃げ出したいと思ってはいてもなつかしい場所ではありません。ロンドンの他の場所はホグワーツや魔法省、グリンゴット銀行などに比べてはるかにイメージにほど遠い場所でした。捜索は行き詰まってしまいました。
ハリーの傷が痛み出すのは彼がロケットを付けているときだとわかりました。でもあれから何も見えません。グレゴロビッチから何かを盗んだ男も思い出しません。
ロンは失望の表情を隠しません。彼は家族の情報を知りたがっているのだと思いました。

数週間が経って、ハリーは、ロンとハーマイオニーがときどきひそひそ話をするようになったのに気づきました。ハリーがテントに戻ると急におしゃべりを止めることもあります。彼らと距離があいたことを感じたりもしました。彼らはハリーがはっきりとした計画があると思ってついてきたのかもしれません。でも無駄足ばかりで彼らはハリーのリーダーシップを疑いだしているようでした。ハリーはまだホグワーツにこだわっていましたが、反対されるのはわかっていたので提案さえしませんでした。

ロンが食事のことでぼやきはじめました。母さんならいろんな料理を作ってくれたのにと。これにはハーマイオニーが切れました。何もないところから料理はできない。文句言うなら全部自分でやれば。二人の口げんかをハリーが遮ります。喧嘩を止めるわけではありません。誰かの話し声が聞こえてきたのです。ハーマイオニーはバッグから聞き耳道具を3つ取り出しました。
テントは結界を張って誰にも気づかれませんがすぐそばに5人の声が聞こえてきました。彼らは川で鮭を釣って食事をしていました。話の様子で彼らはみな逃げている途中だとわかりました。全員の名前がわかります。
ゴブリンが二人、グリフックとゴルナック。3人の男、トンクスの父親のテッド・トンクス、ダーク・クレスウェル(前章でハリーが化けたランコーンがアズガバン送りにしたと言っていた人物)、そしてハリー達グリフィンドールの学友のディーン・トーマスでした。
テッドはマグル出身なので尋問の呼び出しがあったけれど無視していたら逮捕しに来たのでしかたなく逃げ出したとか。ダークはアズガバンに送られる途中で護衛のドーリッシュを麻痺させて彼の箒を奪って逃げたとか。ディーンは小さいときに父親がいなくなっていたので父親がマグルだったかどうかわからないという。
ゴブリン達は魔法社会の争いがどうなろうと知ったことではないが、グリンゴット銀行を彼らが我が物顔でのし歩き、ゴブリン達をこき使おうとしたのに腹を立てたという。お返しに、彼らが倉庫に剣を隠したのを、デスイーターがその倉庫には入れない魔法をかけてやったと言います。

剣と言えばグリフックからこんなニュースを聞いたとダークが言い出しました。日刊預言者新聞には載っていない話で、何でも銀行に勤めているビル・ウィーズリーから聞いた話だそうです。 スネイプがいる校長室にジニー達3人が忍び込んでグリフィンドールの剣を盗もうとしたのですが、スネイプに見つかったということです。
「何するつもりだったんだろ。例のあの人をやっつけるつもりなのか、それともスネイプを」
「何にしてもここに剣を置いておくのは危ないと言うことで、スネイプは例のあの人の意見で剣を持ってグリンゴットに持って行ったそうだ」
しかしグリフックは付け足した。
「でもそれは偽物だ。魔法師が作り上げた物だ。本物は何世紀も前にゴブリンが作ったのだが、グリンゴット銀行の倉庫にはない」
「デスイーター達が知ったら驚くだろうな」
「彼らに知らせる必要はない」
ハリーは一番知りたいことをディーンが聞いてくれないかと待っていた。なにしろジニーの元カレなんだから。
「ところでジニー達はどうなったんだ?」
「ああ、罰を受けたそうだ」
「大丈夫なのか?ウィーズリー家はもうこれ以上けが人を出したくないだろうから」
「深刻な怪我はしていないと聞いている」
「スネイプはそういうことはしない奴だから大丈夫だとは思っているが」
「本当にそう思ってるのか、テッド。あいつはダンブルドアを殺したんだぞ」
「ああ、でもお前はあの事件ではポッターが関わっていると言ったじゃないか」
ここから話はハリーがどうしているのか、になります。ひょっとしてすでに捕まってひそかに殺されているのじゃないだろうかとか。そんな中、セノフィリアス・ラブグッドが発刊している雑誌「キブラー」で毎号ハリーを助けようというキャンペーンをやっているという話が出てきます。いずれにしてもハリー本人が出てきて何らかの行動を起こさないと誰も何もできない。
やがて食事後彼らは消えていきます。

ハリー達は少し興奮しています。ジニーのこと、剣の話。
ハーマイオニーが突然思いついてバッグの底の方からあるものを引っ張り出しました。フィネアス・ニゲルスの肖像画です。グリフィンドールの剣が入っているケースの横にいるのだから何か知っているはずです。
呼び出された彼は驚いています。グリモールド・スペースではなくどこかに持ち出されている。怒り出します。しかし丁重な言葉使いでやっと答えてくれます。ただしスリザリン出の校長らしく、ハリーの仲間達を言うときにはいちいち「うすのろ」とか「まぬけ」などの蔑称をいちいちつけて言うので、そのたびにハリーやハーマイオニーは怒ります。
盗みに入ったのは予想通りジニーとネビルとルナの3人。捕まった3人は罰として隠れの森に行かされてハグリッドの手伝いをさせられたそうです。最悪アズガバンや苦しみの呪文を予想していたハリーとハーマイオニーはほっとします。ジニー達はこれが罰だなんて笑っていたのじゃないだろうか。続いてグリフィンドールの剣が手入れとかで持ち出されなかったかどうか尋ねました。するとあの剣はゴブリン製作だから手入れなどまったく必要がないと言いました。
ハリーは、ダンブルドアの肖像画があるはずだから、ここに連れてきてもらえないかと頼みましたが、同じ絵同士なら外へでも出かけられるし、同じ室内なら他の絵に行くこともできるけれど、外に出られるのは同じ絵同士だけだと言われてしまいます。
最後に一つ質問しました。最近でグリフィンドールの剣がケースから出されたのはいつかと。フィネアスが答えました。ダンブルドアが剣を使って指輪を壊すときに取り出したと。

一つ謎が解けました。ホークラクスはグリフィンドールの剣で壊すことができるのです。ダンブルドアは指輪を壊す必要があったから先にハリーに渡すことができなかったのです。死んでからハリーに渡そうと思っても邪魔されるのはわかっている。だから偽物を作っておいたのだろう。 だったら本物はどこにあるのだろう?ホグワーツでないことは確かです。彼らに取りに行けません。スネイプは知っているのだろうか。すり替えたことさえ知らないはずだから。ひょっとしたらホグスミードかもしれない。
「ロン、どう思う?」
ハリーはロンの姿が見えないことに初めて気がつきました。彼は自分のベッドにいました。
「やっと気づいてくれたのか。二人だけで盛り上がっちゃって。僕なんかどうでもいいんだろ」
「どこか具合でも悪いのか?」
「どこも、全然」
「休んでいた方がいいんじゃない」
「ああ、そうさせてもらうよ。テントを出ていくから」
「どういうことだよ」
雨が降り出しました。テントの上に雨粒が落ちてきます。
「こんなところで無駄な人生を費やしたくないんだ。わかるか?腕の肉はえぐられる、満足な食事も出来ない、この何週間逃げるだけで何の成果もあげられない」
「もうあきらめるのかい」
「ああ、そうだね」
ハリーはだんだん腹が立ってきました。
「君は5つ星のホテルに泊まれると思ってたのかい。毎日ホークラクスが見つかるとでも思ってたのか。クリスマスにはお母さんの所に戻れるとでも思ってたのか」
「じゃあ、僕たちは何をしたって言うんだ。ダンブルドアが君にやるべきことを告げていたんじゃなかったのか。でも無計画だなんて」
雷が鳴りました。
「君には最初から話をしてきたじゃないか。ダンブルドアが言ったことは全部話しただろ。ホークラクスは一つ見つけたじゃないか」
「で、次の物に近づきつつあるんだろうね、どうなんだ」
その時ハーマイオニーが叫びました。
「ロン、ロケットをはずして!それを一日中つけていたからそんなことを言ってるのよ」
「そうでもないさ」
ハリーが言いました。
「君たち二人がこそこそ話をしているのに気がついてたさ。僕に何の考えもないと思っているんだろ」
「ハリー、そんなことわたしたちは……」
「君たちは僕に失望したって言ってた。少しもやる気がないって」
「そんなこと言ってない、ハリー」
彼女は泣き出しました。雨が降り出すように涙がとめどなく流れています。

「じゃあ、君は何でここにいるんだ」
ハリーがロンに尋ねます。
「自分探しかな」
「じゃあ家にいてもできるだろ」
「ああ、そうするよ」
ロンは数歩ハリーに近寄りました。
「妹のことを聞いたろ。でも君はまったく心配もしていない。隠れの森なら安心だなんて。あの巨大蜘蛛なんかがいるとんでもなく怖ろしい森にだよ。あそこでどんなことがあったか忘れたのか」
「そういう意味じゃなく、仲間もいるし、ハグリッドもいるし」
「僕の家族のことも言ってた。これ以上ウィーズリー家の子どもを怪我させたくないって。何があったか気にもしてない」
「ロン、そうじゃないでしょ。ジョージが耳を失ったのはみんが知っていることだし、あなたも重傷で寝ていることになっているでしょ。そういうことを言ってるのだと思うの」
ハーマイオニーが割り込みます。
「ああ、そうかもしれない。でも僕は家族が心配なんだ。君は家族が安全だからいいよな」
「僕の両親は死んでるんだ!」
「ああ、僕のところもそうなるかもしれない」
「じゃあ、出て行け!家に帰ってお母さんに甘えたらいいじゃないか」
ロンがポケットに手を入れました。ハリーも応答します。でもお互いの杖はしまいました。替わりにハーマイオニーがバリアを張りました。ハリーとハーマイオニー、対してロン、と初めてはっきりと分けられました。
「ホークラクスを置いていけよ」
ロンは首からロケットを外して椅子にかけました。そしてハーマイオニーに向かって
「君はどうするんだ?」
「わたしは……ハリーと一緒に手伝うって約束したでしょ、私たち」
「君は僕よりハリーを選ぶんだね」
「そうじゃないわ、ロン、戻って!」
ハーマイオニーは自分が張ったバリアにはじかれました。バリアを解除してテントの外にロンを追いかけます。森の木々の間からロンの名前を呼ぶハーマイオニーの声が響きます。
しばらくしてずぶぬれのハーマイオニーが泣きながら戻ってきました。
「行・っ・ちゃ・っ・た……」
椅子にうっつぶして泣き続けます。ハリーはロンのベッドのブランケットをとってハーマイオニーにかけて自分のベッドに上がりました。雨の音だけが響いています。


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