映画「白夜行-白い闇の中を歩く-」 [書評・映画評]
少女は地獄の中にいた。少年は少女の地獄を自分が負おうとした。
白い道を少女は歩むはずではあったが、二人の道はどこまでも
闇の中だった。
2009年に韓国で公開された韓国映画である。
今年になってようやく日本で公開されるようになったのは大人の事情か。
何しろ、日本版が昨年堀北真希主演で公開されたのだから。
冒頭からヒロイン(ソン・イェジン)による18禁の愛欲場面にからめて
殺人事件が「白鳥の湖」のBGMの中、並行して映し出される。
この場面だけで、この映画のテーマが凝縮されたような。
これは決して日本映画ではできなかった。堀北真希に期待は出来ない。
TV版では綾瀬はるかが演じたとかだが、TVではましてや。
しかし、この小説の本来の姿はこの韓国版が正しいのかも。
原作は読んでいないがかなり長い物語だとか。
日本版では主人公の高校・大学時代も詳しく映されていたが、韓国版では
最初の事件が起きた時と、その14年後だけを映像化し、途中の学生時代は
あっさりと省略した。結果的にはこれが映画としては正解だったかも。
出演者の本気を感じる。子役も含めていい加減におさめない。
ヒロインの徹底した冷たさ。しかし内に流れる思いも含めて見事に
演じきっている。
難点がひとつ。
ヒロインは一流デザイナーのはずなのに、同時に高校の教師をしている
という部分が意味不明。韓国の特殊な事情があるのだろうか。
実家の庭から死体が発見されるのだが、そのことで面からの警察の
介入はなかったのだろうか。まあ疑惑が浮かぶだけで何の証拠も
ないのだが。
事件を追う刑事が事件の事実を知って、少年・少女のその現場に
時空を超えて立ち会う場面、優れた演出だと思う。
はっきり言って、日本版よりずっと優れた映画だと感じた。