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書評「カケラ」 [書評・映画評]


カケラ (集英社文庫)

カケラ (集英社文庫)

  • 作者: 湊かなえ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2023/03/02
  • メディア: Kindle版


ある地方の村に住む少女が大量のドーナッツに囲まれて自殺した。
ある人は彼女のことを美少女と言い、別の人は、村一番のデブと言う。

湊かなえの本を読むのは久しぶり。一時こって読みあさった頃もあったが、
「豆の上で眠る」がめちゃくちゃ無理で、それ以来離れていた。
映画作品はけっこう見たけれど、当たり外れの差が激しい。「告白」や
「白ゆき姫殺人事件」は面白かったけれど「少女」は失望した。
TVドラマは「リバース」の第1話と最終話だけ見た。原作を改編して、
改編部分が原作を台無しにしていた。

この作品は、取材協力と情報提供をした実在の美人医師・友利新を
イメージした美人美容整形外科医橘久乃を主人公としながら、プロローグと
エピローグにしか彼女のセリフは出てこない。各章で聞き取りを行った
相手の言葉だけで物語が進められていく。しかし、思い描くのは
友利新の映像ばかり。

彼女が経営する美容外科に、幼なじみの同級生が美容相談に来て、
彼女たちの同級生だった女の子の娘が自殺したというニュースを聞く。
別の時に、その亡くなった娘と同級生だったというアイドル少女が
美容相談に来て、中学時代の亡くなった少女の様子を知る。とても
自殺しそうにもない子だったとか。話の流れで、別の同級生の
父親が、またまた彼女の同級生で、しかも彼女の元カレだったことから
その元カレを初めとして、芋づる式に自殺した少女の真相を尋ね回る
こととなる。
そしてたどりついた結論は・・・・

ミステリー作家らしく、衝撃の事実が待ち構えている。
なんとなく「リバース」みたいだな、と書けば、ネタバレになるのかな。

物語はたんたんと進むのだが、「イヤミスの女王」の面目躍如で、
気分悪くなる場面が出て来る。読み返すのだったら、この部分早送りしたい。
また、ミステリー作家らしく、伏線が散りばめられ、次の章や後の章で
回収が進められる。と言うか、伏線があるから、次の章が何の疑問もなく
続けられるのだが。そんなわけで、物語を読みながら、何度も振り返ったので、
二度読みすることもないかもしれない。

気分悪くなる人物も出て来るけれど、主人公の女医自体、無意識に人を
傷つけてきた過去があり、指摘されてゴメンと言っても、今さら感が強い。
当人は無意識に行ってきたことが、どれだけ影響を与えていたのか、
本当に気づいているかどうかは不明のまま。

で、結局は真相が判明しても、何の解決もなされない。
少女を自殺に追い込んだ人物を糾弾することもできない。
この後の物語はどういう結末を迎えるのだろうか。
あるいは結末など最初から存在しなかったのかも。
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