書評「カケラ」 [書評・映画評]
ある地方の村に住む少女が大量のドーナッツに囲まれて自殺した。
ある人は彼女のことを美少女と言い、別の人は、村一番のデブと言う。
湊かなえの本を読むのは久しぶり。一時こって読みあさった頃もあったが、
「豆の上で眠る」がめちゃくちゃ無理で、それ以来離れていた。
映画作品はけっこう見たけれど、当たり外れの差が激しい。「告白」や
「白ゆき姫殺人事件」は面白かったけれど「少女」は失望した。
TVドラマは「リバース」の第1話と最終話だけ見た。原作を改編して、
改編部分が原作を台無しにしていた。
この作品は、取材協力と情報提供をした実在の美人医師・友利新を
イメージした美人美容整形外科医橘久乃を主人公としながら、プロローグと
エピローグにしか彼女のセリフは出てこない。各章で聞き取りを行った
相手の言葉だけで物語が進められていく。しかし、思い描くのは
友利新の映像ばかり。
彼女が経営する美容外科に、幼なじみの同級生が美容相談に来て、
彼女たちの同級生だった女の子の娘が自殺したというニュースを聞く。
別の時に、その亡くなった娘と同級生だったというアイドル少女が
美容相談に来て、中学時代の亡くなった少女の様子を知る。とても
自殺しそうにもない子だったとか。話の流れで、別の同級生の
父親が、またまた彼女の同級生で、しかも彼女の元カレだったことから
その元カレを初めとして、芋づる式に自殺した少女の真相を尋ね回る
こととなる。
そしてたどりついた結論は・・・・
ミステリー作家らしく、衝撃の事実が待ち構えている。
なんとなく「リバース」みたいだな、と書けば、ネタバレになるのかな。
物語はたんたんと進むのだが、「イヤミスの女王」の面目躍如で、
気分悪くなる場面が出て来る。読み返すのだったら、この部分早送りしたい。
また、ミステリー作家らしく、伏線が散りばめられ、次の章や後の章で
回収が進められる。と言うか、伏線があるから、次の章が何の疑問もなく
続けられるのだが。そんなわけで、物語を読みながら、何度も振り返ったので、
二度読みすることもないかもしれない。
気分悪くなる人物も出て来るけれど、主人公の女医自体、無意識に人を
傷つけてきた過去があり、指摘されてゴメンと言っても、今さら感が強い。
当人は無意識に行ってきたことが、どれだけ影響を与えていたのか、
本当に気づいているかどうかは不明のまま。
で、結局は真相が判明しても、何の解決もなされない。
少女を自殺に追い込んだ人物を糾弾することもできない。
この後の物語はどういう結末を迎えるのだろうか。
あるいは結末など最初から存在しなかったのかも。